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文字数 956文字

 修一が、私と有希ちゃんの会話に加わってきた。
「晶、こいつには気を付けた方がいいぞ! 幼児だと思って相手をすると、痛い目を見る! 何たって、こいつは化け物だからな!」
「修一兄ちゃん、失礼よ! 修一兄ちゃんだって、嘘吐き修一じゃない!」
「なんだと! 俺がいつ、嘘吐いたってんだよ!」
「晶お姉ちゃんに、『自分は力が無い、落ちこぼれだ……』みたいなこと言って、お姉ちゃんの同情引こうとしたでしょう?」
「あれは……、嘘じゃない……ぞ」
「お姉ちゃんも見たでしょう? 悪魔だなんだなんて言わなくても、修一兄ちゃんって強いんだよ。こっちの方がよっぽどバケモンよね。直ぐキレるし……」
「キレるのは関係ないだろ!」
 私と有希ちゃんとの会話から、いつの間にか、二人の口喧嘩になってるじゃないか! でも、なんか楽しいな。私もいつか結婚して、子供を産んで、旦那様と娘の会話を、こんな感じで聞く日がくるんだろうか? そんな日がきたら……、いいよな。

 駅前に近づくにつれ気になっていたんだが、サイレンの音やら、人の慌ただしい動きやら、どうも何か、落ち着かない感じが強くなってきていた。
 そして、私たち3人がドラッグストアに着くと、そこはもう、私たち来る前から事件現場になっていたのだ。
 サイレン鳴らしているパトカーが2台止まっているし、警察官が黄色いロープで野次馬が入ってくるのを押し留めている。
 野次馬の話を盗み聞きすると、どうやらドラッグストアの店員が、友人3人と喧嘩になり、友人の1人に持っていたナイフで刺し殺されたとのことらしかった。
 これは後で分かったことだが(耀子さんがメールで教えてくれた)、殺人教唆した店員が、それに失敗した3人を叱責し罵倒したため、興奮した1人が店員を刺し殺したと自供してるそうだった。そして、例の女子高生、横山沙耶の証言から、殺された店員と3人の悪事が露見し、全てが白日の元に晒されたとのことらしい。
 で、私たちの関与については、耀子さんが裏で手をまわし、誤魔化したとのこと……。でも、これは少々眉唾臭い。

 こうなっては、修一や私じゃ、もう手の出しようが無い。
 私たち3人は、何か割り切れないものを感じながら、ドラッグストアを横目に見て、駅へと向かって行ったのだった。
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