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文字数 1,036文字

 そうだった。有希ちゃんは迷子だったんだ。ご家族が心配しているに違いない。私がまず気にしなくちゃいけないのは、自分のお金とか時間じゃなくて、迷子になっている有希ちゃんのことだった。
「じゃ、心配してるんじゃないの? 伯母さんか、習い事の先生の連絡先は分からない? 私が連絡するから、ここに来て貰った方が、いいんじゃない?」
「分かった。連絡する。でも、有希、スマホ持ってるから、自分で連絡するよ。連絡先登録してあるし……」
 それはそうだ、最近は個人情報とかうるさいものな。見知らぬ私に、伯母さんの連絡先とは言え、意味も無く知らせるべきじゃない。
 有希ちゃんは、その場でポーチからスマホを取り出し、小声で通話を始めた。どうやら相手は、行先の伯母さんの所らしい。
「うん……。うん……。そうする。うん、心配いらないよ。じゃ、切るね」
 し、しかし、どうなったのだろう? 私の心配そうな顔を見て、有希ちゃんが電話の内容を説明する。
「伯母さん、晶お姉ちゃんに送って貰いなさいって。伯母さんが迎えに来てから、伯母さん()に戻るより、有希が晶お姉ちゃんに送って貰った方が、早く着くからって。それから、これ以上迷惑かけないようにって。あと、『ちゃんと、ありがとうって言うのですよ』とも言っていた……」
 あ、そんな、無責任な……。
 金銭的には、有希ちゃんが出すと言うので、気にしていないのかも知れないが、いくら有希ちゃんがしっかりしているとは言え、こんな小さな女の子を、見知らぬ奴に預けて「送って貰え」は無いだろう?
 そんな私の心配を他所に、有希ちゃんは連絡もして、安心しきった様に待望のフルーツパフェが来るのを待っている。
 有希ちゃんを送るのは納得した。試験勉強なんて最初からどうでもいいし、あいつをとっちめるのも後に回していいだろう。ただ、この伯母さんには一言言わずには修まらない。こんな可愛い子に何かあったらどうする心算なんだ!

 それから直ぐに、二つのパフェは、私たちのテーブルに届けられた。
 有希ちゃんは、美味しそうに、生クリームとアイスクリームを、交互にスプーンで掬って食べ、メロンやオレンジも、嬉しそうに両手で持って頬張っている。何か、それを見ているだけで、とても幸せな気分になってくる。
 私も、チョコレートの掛かったクリームを掬って口に入れる。うん、少し苦いけど甘くて美味しい。
「晶お姉ちゃん、犯人探しをしようとしてるでしょ? 止めた方がいいよ」
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