最終話

文字数 442文字

 又郎は玉手箱を小脇に抱えると、亀にまたがり、陸へと帰っていきました。
 それを見送っていた乙姫様の元に、メイドのハマチがやってきます。
 ぜえぜえと息を切らしたハマチは、玉手箱と同じ外見の木箱を持っていました。
「乙姫様。もしかしてこちらとお間違えになったのではありませんか?」
 ハマチから箱を受け取り、乙姫はふたを開けます。
 中には小判がぎっしりと詰まっていました。
 乙姫は「あら、こっちが本当の玉手箱でしたわ。わたしったらうっかりさんね」と、握りこぶしを作り、自分の頭を軽く小突くと、ペロッと舌を出しました。
「今からでも追いかけますか?」
「その必要はないわ」乙姫はバッサリと切り捨てました。「これも運命でしょう」
「ちなみに、あっちの玉手箱の中身は?」ハマチは恭しく尋ねました。
「なんだと思う?」
「……まさか、あれですか?」不吉な予感が走ったハマチは、思わず息をのみます。
「どうかしらね」
 不敵な笑みだけを残し、乙姫は竜宮城の奥へと消えていきましたとさ。

 めでたし、めでたし、めでたし。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み