第25話

文字数 585文字

「そうだ。ふたを閉じたまま、箱に穴を開けよう。これなら、ふたを開けたことにはなるまい」
 さっそく小型のドリルを用意し、箱の横に穴を開けようとしました。だが、そこで又郎の手が止まります。
「いや、待てよ。もし中に有毒ガスが充満していたら、大変なことになるかもしれない」
 万が一を考慮した又郎は、遠隔操作のできる手術室を使うことにしました。
 玉手箱を台に乗せ、その脇に実験用のマウスの入った小型のボックスを置きました。
「これなら大丈夫だろう」
 遠隔装置で玉手箱に穴をあけると、案の定、中から怪しい煙が発生しました。
 すぐさま穴をふさぎ、煙が収まったところでボックスを運び出し、マウスを詳細に観察します。
 どうしたことでしょう。
 マウスは明らかに老化しているではありませんか。
 玉手箱の中には老化を促進する気体が入っていると確信した又郎は、以来、正体不明の気体の研究に没頭するようになりました。
 五年後、又郎はついに玉手箱の気体の構造を解明することに成功しました。
 さらに研究を推し進め、やがて生物の成長ホルモンを促進させる物質の生成手段も確立します。
「玉手ガス」と命名されたその気体は、家畜や農産物を短期間で成長させ、食糧不足を解消させるまでに至りました。
 二十年後。
 あらゆる賞を総なめにした浦氏又郎博士は、世界中から賞賛され、幸せに暮らしましたとさ。
 めでたし、めでたし。
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