第8話

文字数 342文字

 釣竿を受け取った若者たちは、又郎と亀を残し、立ち去っていきました。
「ありがとうございました。浦氏又郎さん」
 驚かずにはいられません。亀が人間の言葉をしゃべっただけにとどまらず、さらに初対面であるはずの又郎を知っていたのですから。
「……どうして僕の名を?」
 小首をかしげる又郎に、亀はこう応えました。
「当然です。あなたは私たちの間では有名人ですから」
 まさか亀にまで自分のことが知られているとは。なんだか誇らしく思え、又郎は嬉しくなりました。
「又郎さんは貧乏で意地悪で女性にもモテないんですよね。たしかに不細工だし、貧乏そうだし、それに変な臭いもす……」
 ぐにゅっ!
 又郎は亀の首を絞めつけてあっさり絶命させると、何事もなかったかのように帰宅していきましたとさ。
 めでたし、めでたし。
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