第23話

文字数 683文字

 亀と別れ、又郎は家に帰ろうとしました。
 しかし、少し進むと何やら見慣れない建物が並び立っていて、行き交う人々も、これまで見たことがない奇天烈な恰好をしていました。
 そこで又郎はピンときます。
「まさか、ここは未来の世界なんじゃなかろうか? もしかして竜宮城と地上とでは、時間の流れ方が異なっているのかもしれない」
 実際に調べてみると、又郎が暮らした時代より、二百年以上も経過していることが判明しました。年号も令和と呼ばれているらしいのです。
 絶望に打ちひしがれ、満身創痍の又郎。破れかぶれになり、玉手箱に手を伸ばします。
 しかし、乙姫との約束を思い出し、ふたを開けることはしませんでした。
 だが、どうしても中身が気になって仕方ありません。
 そこで浦氏又郎は、あることをひらめきます。
 すぐさま山に登った又郎は、玉手箱を土の中に埋めてしまいます。その場所には目印をつけ、いつでも掘り返せるようにしました。
 山を下り、なんやかんやで、又郎はレントゲン技師になることができました。
 又郎は十年ぶりに玉手箱を掘り返すと、手近な病院に侵入し、レントゲンにかけます。
「これで約束を破らずに中身を確認できるぞ!」
 しかし、レントゲン写真にはなにも映っていませんでした。
「もしかして、中は空なんじゃ?」
 振っても音もしないし、重さもほとんどありません。又郎は以前から玉手箱の中身が空っぽではないかと疑っていました。
「だったらいっそのこと」
 又郎はついに箱を開ける決意をしました。
 翌日、レントゲン室に入った看護師は、又郎に似た顔の老人の死体を発見しましたとさ。
 めでたし、めでたし。
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