第13話

文字数 604文字

「こちらへどうぞ」
 亀に促されるまま、又郎は門をくぐります。
 その途端、大きなタコが現れ、行く手を阻みました。おそらく門番として竜宮城を守っていると思われます。大タコは又郎の手足に絡みつき、羽交い絞めにしました。
「おのれ! 人間の分際でこの竜宮に足を踏み入れるとは笑止千万。目にもの見せてくれるわ!!」
「この方は私の命の恩人です。決して怪しい者ではありません」
 亀が事情を説明すると、大ダコは「それはすまなかった」と、又郎を解放しました。
「彼はこの城の警備を担当しています。悪気はないので、どうか許してやってください」
 安どのため息をついた又郎は、震えの残る足で場内へと足を進めます。
 やがて大広間に出ると、奥には一人の女性が椅子に腰を下ろしていました。
 あまりの美しさに又郎が見惚れていると、亀はその女性に近づき、なにやら話し込んでいます。きっと浜でのいきさつを説明しているのでしょう。
 話を聞き終えた女性は、椅子から立ち上がると、又郎に言いました。
「わたくしはこの城の城主、乙姫と申します。浦氏又郎様。このたびは亀を助けていただき、ありがとうございました」
 礼を言われ、かしこまる又郎。
 だが、「では、お気をつけて」との言葉を最後に、乙姫は部屋を後にしました。
「え? それだけ?」
 なんのために連れてこられたのか釈然としない又郎は、再び亀の背中に乗せられ、元の海岸まで戻されたとさ。
 めでたし、めでたし。
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