第18話 病院送り

文字数 368文字

 「俺は、引っ掻かれない」と、豪語していた父が、
アンちゃんに、思いっきり引っ掻かれた。
右手首は、みるみるうちに腫れあがり、「しびれてきた」と、言う始末。
これは、通常の傷とは、少し違う。
「早く、病院いったほうがいいよ」しぶる父を説得し、どうにか病院へ。
やがて包帯ぐるぐる巻きになって、父は帰ってきた。

それから父とアンちゃんは、お互い近寄っていないかのように見えた。
ところがある日、
「ニャーン」
と、甘えた声で、窓の前に座るアンちゃん。
「どうしたの?何かいるの?」
私が聞くと、
「これは、外に出たい合図なんだ」
そう言って父は、アンちゃんを慣れた手つきで抱っこして外へ出た。
「え?」
見間違いかと思ったが、すっかり仲良くなっている二人。
「言っている事は、だいたいわかる」
そう言って、庭で草木や鳥を見せている。
「え?」
また引っ掻かれなきゃ、いいけど。




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