第9話 病院が苦手

文字数 586文字

 アンちゃんは病院が苦手だ。キャリーケースを見ると、一目散に逃げて隠れてしまう。
なので、前の日からキャリーケースを出しておいて、油断させておくのだ。
次の日には、キャリーケースの存在にも慣れて、逃げなくなる。
「ほーら、アンちゃん、少しお外行こうか」
なんて、抱きかかえてケースに入れてしまえば、こっちのもの。
ケースのふたを閉めて車に乗り込むと、ずーっとニャーニャー抗議の連続。
「だまし討ちなんて、酷すぎ。サイテーよ、あんた。後で覚えてなさいよ」
「ハイハイ、すみませんね」
さて、アンちゃんも苦手な病院だが、私も苦手だ。特に待合室が非常に辛い。
目の前には、リードにつながれた柴犬がハヒハヒ言い、その隣には、キャリーに入れられた猫。
新たに、抱っこされたポメラニアンが登場して、「お母さん」達の会話が始まるのだ。
「あら、猫ちゃん?ロシアンかしら、かわいいわね。
うふふ、うちにもね、猫ちゃんが3匹いるのよ。朝からね、バタバタ大変なのよ。
でもね、この子はね、おとなしいから。あ、今日は食欲がなくてね、心配になっちゃって」
「それは、心配ですね」
「そうなのよ、あら、お宅は三毛ちゃん?おとなしそうよね。
こちらは、ポメちゃんね。昔飼っていたのよ、可愛いわよね。でも、無駄鳴きがすごかったのよ」
と、言った感じで、延々と続くのだ。
「ちょっと、うるさいわね。黙んなさいよ、オバはん」
アンちゃん、しー。











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