第7話 名前の由来

文字数 441文字

 アンちゃんという名前は、母がつけた。
名前の由来は、ロシアンブルーのアンでも、グリーンゲイブルズのアンでもない。
もちろん餡子でも、アンタッチャブルでも、アンティークでも、アンインストールでもない。

「名前は、考えてあります」
そう言って母は、A4サイズのコピー用紙を差し出して来た。
そこには、孫の名前よろしく筆ペンで堂々と、こう書かれていた。
「安心安全のアン」
安心安全?え?何、それ…。
「フーテンの寅」さん的な?
私も考えてみようかな、と少しは思っていたのだが、この強烈すぎる名前の出現により、
一気に敗北感を味わい、すっかりやる気も失せてしまった。

その後、安心でも安全でもないアンちゃんに育ってしまったことを、
その時の私たちに、ぜひ教えてあげたい。

「安心、安全、そうよ、この家を守っているのは、私だってこと、忘れないでよね」
「そ、そうでしたか」
「それから、名前。何て呼んでくれても、かまわないわよ。どうせ返事しないんだから」
「はいはい、でも、シッポ、動いちゃってますよ?返事の代わりにね」










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