第28話 沈黙のテレビ

文字数 374文字

 アンちゃんがまだ若くて、一日中走り回っていた時。
アンちゃんは「寝子」ではなく、「寝ない子」だった。
ずっと起きていて、ひたすら走る、飛ぶ、壊すを繰り返していた。
棚の上の置物は、落として破壊。
花瓶の中の花は、噛みちぎる。
障子はズタズタ。
そして極めつけが、テレビだ。
昔のブラウン管なら、テレビの上で寝る、なんて微笑ましい光景が見れただろう。
しかし、今は違う。
薄型テレビに、休むスペースなどないのに、ジャンプして飛び乗る。
平均台のごとく、グラグラと揺れるアンちゃんに、一同息を飲んだ。
思わず「ダメ!」
と、叫んだら、アンちゃんが驚いて、思いっきり後ろ足でテレビを蹴りつけて逃げた。
耐震用の粘着テープをテレビの足に付けていたので、後ろに倒れることには
堪えてくれたが、その反動で思いっきり前に倒れてしまった。
「ガシャン」
画面は割れ、テレビは何も語らなくなった。



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