第4話 障子の穴

文字数 388文字

 「猫のしかり方は慎重に、決して怒鳴ってはいけません」
なんて言われているが、思いっきり噛みつかれた時を想像して頂きたい。
歯が皮膚に食い込み、出血を伴うほどなのだから。
「こら!」
痛みに震え、大声で叫ぶと、脱兎のごとく2階へ逃げる。
しばらく静かになってほっとしたと思ったら、大間違いだ。
「しまった、私の部屋のドアが開けっ放しだ」
アンちゃんが、中へ入ってしまう。
なぜなら私の部屋の窓は、障子張りだから。
急いで部屋へ入ると、こちらを見ながら右手の爪1本を障子に刺しているところだ。
「ほら、ほら、あんたが大声だすから…ふふ、もう、刺しちゃったわよ」
彼女が、そう言っているように見える。
ピンと張った障子に、プツリと穴が開いた。
「だめー」
私の声と同時に「ビリビリ」と、紙の破ける音が響いた。
先ほど大声を出された腹いせに、彼女は、わざと障子を破くのだ。
私が来るタイミングを見計らって、確実に。








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