第26話 ふみふみ

文字数 326文字

アンちゃんが、膝の上に乗る時がある。
なかなか貴重なので、おろしたくはない。
やがて、ゴロゴロ音とともに「ふみふみ」が始まる。
爪は、私のふくよかな太ももに、ブスリブスリと刺さる。
「いたた」
痛いけど、この可愛いふみふみを、しっかりと記憶しておきたい。
「いたたた」
ああ、このミンクのような柔らかい背中を、なでてしまいたい。
「いたい、いたい」
ほんの一瞬、ほんの少しだけ。
やがて、私は誘惑に負けて、その小さな背中へと手を伸ばす。
柔らかな手触りとともに、あたたかな体温が伝わり、喜びをかみしめる。
「痛!」
次の瞬間、鈍い衝撃とともに、腕を引っかかれ逃げられてしまった。
アンちゃんが背中を、必死にベロベロとなめている。
まるで汚いものにでも、触られたかのようにベロベロと。







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