第30話 これからも

文字数 283文字

 最近アンちゃんは、よく寝ている。
昔では、考えられなかった光景だ。
押し入れの上の段に上りたいときも、以前ならすぐに飛び乗ることができた。
けれど今は、少し躊躇する。
上を見上げて、おしりを振るが、ジャンプに踏み出せないでいる。
「乗りたいの?」
ひょいと抱き上げて、上の段にあげてやると、
「ちょっと!何してんのよ!今、自分で上がろうとしたのに!」
抗議の鳴き声と共に、すぐに降りてしまう。
はいはい、すみませんでした。
威勢のよさは健在だけど、老いを感じて少し寂しい気もする。
「はあ!?あんたこそ、最近シワすごいわよ!」
あ、老いは私もか。
まあ、これからも、よろしくね、アンちゃん。



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