第10話 スーパー看護士

文字数 502文字

 昔、フクちゃんというキジトラの男の子がいた。
もちろん名前は母が命名、幸福の福で、フクちゃん。
ある日、ペットショップの前に「子猫さしあげます」の張り紙があって、
見に行くと手のひらに乗るくらいの、小さなモコモコがいた。
エメラルドグリーンの瞳を輝かせて「ミュー」と、鳴かれたら
そりゃもう連れて帰るしかあるまい。
こうして、一家の仲間入りをしたフクちゃん。

フクちゃんは、おっとりしていて、とても優しい子だった。
誰かが病気で寝込むと、ずっとそばで看病してくれるのだ。
ぎっくり腰で寝込む母の横で、毎日看病していたフクちゃん。
「フクちゃん、ご飯は?」
「いいの、まだここにいるから」
こんな感じで、ぴったりと離れない。
フクちゃんが、そばから離れる時、それすなわち快方に向かったということ。
「もう安心、僕行くね」
それからすぐに、母は起きられるようになった。
猫のゴロゴロ音は、骨折の回復を早めるという。
その他、リラックス効果もあるらしい。
フクちゃんは、弱っている人のそばで、回復の処置を施していたのだ。
誰よりも、家族思いだったフクちゃん。
今は虹の橋を渡ってしまったけれど、
あちらで、のんびりゴロゴロ生活を送れていたらいいなあ。








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