第11話 好きなくせに

文字数 369文字

 アンちゃんは、シャンプーが苦手。
と、言っても最初だけ苦手だ。
「何!お風呂?シャワー?シャンプー?む、り、よ!むーり!」
お風呂場に連れて行こうものなら、必死の形相で抵抗する。
「アンちゃん、ほら、気持ちいいから」
シャワーからお湯を出すと、ガガガッと肩に登る。
「いだだだだだ」
「何それ、無理無理、お湯?ダメダメ、嫌よ」
「無理なのは私ですって。肩に爪!食い込んでますからー」
ここで、ボロトレーナーには穴があく。決して外行きの洋服など着てはいけない。
落ち着いて、呼吸をととのえるのが大切。心を無に。
「ふー」
それから静かに、丁寧に、お姫様のように、ゆっくりと、シャンプーをする。
「ま、まあまあの湯加減じゃない。別に気持ちよくなんか、ないわよ!」
「そうなの?」
なんだかんだで、大人しく目をショボショボさせているから、また可愛い。
「んもー好きなくせに」





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