第13話 門柱の猫

文字数 396文字

 30年ほど前、線路の目の前の家に住んでいたことがあった。
その家は、庭付きならぬ猫付き一戸建てだった。
引っ越してきた時、石の門柱に小振りな三毛猫が座っていて
我々を出迎えてくれたのだ。
ずいぶんと慣れていたその猫は、すぐに我が家の仲間入りをした。
猫といえばミーちゃんでしょ!という私の単純な発想により、すぐにミーちゃんと命名。
彼女は、犬の様な性格で、母と一緒によく散歩を楽しんでいた。
「ミーちゃん、買い物行くよ」
母が言うと、ミーちゃんはどこからともなく飛んできて、一緒に買い物に付き合うのだ。
同じ歩幅で、寄り添うように。
畑に囲まれたのどかな場所で、豆腐屋さんまで二人だけのお散歩。
「じゃあ、帰ろっか」
「うん」
夕方になる頃には、ちょこんと門柱に座り、今度は学校から帰る私を出迎えてくれる。
「お帰り」
「ミーちゃん、ただいま!」
石の門柱のある家を見ると、ふと思い出す。
昔むかしの、ミーちゃんとの思い出。









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