第２５話 司法書士にコンタクト
文字数 2,243文字
税理士は実家を訪れ、預かっていた書類と作成した遺産分割協議書を持参した。
４月２４日土曜日に私と妹は実家に集合。相続人４人で書類に署名捺印した。
そこに税理士の紹介のＧ司法書士の連絡先のメモがあった。
私は「これからは全部私が仕切るから」と言い、メモの写真を撮った。
最初からそうすればよかった。その日のうちにＧ司法書士へ電話した。
「Ｇ先生ですか？ 税理士のＦ先生からの紹介で、え、まだお聞きになっていない？ 今回、相続登記をお願いしたいのです。こちらの住所は○町の□□です。昔、廃業するとき会社清算と会社名義だった土地を両親に書き替える登記でＧ先生にお世話になったことがあるそうです、母はＧ先生のことをよく覚えていました。はい、父が亡くなって。いえ、それで、遺産分割協議書と戸籍謄本や印鑑証明など書類はそろっています。はい、まず書類を確認していただいて、ご相談を。それで、できれば土日の休みにこちらに来ていただきたいのですが。ああ、よかった、じゃあ、今度の土曜日の１０時半ですね。えっと、実は相続物件の建物が１つ未登記でして」
司法書士は話しの途中で、以前行った実家の登記を思い出したようだった。
「ああ、あそこの、失礼ですがどなたかお亡くなりになったんですか？ ああ、お父さんが、そうですか、遺言書とかはあったんですか？ ああ、もう遺産分割協議書ができて、みなさんご了解されている、はい、はあ、未登記、まあ未登記でも相続登記はできるんですよ」
未登記でも相続登記はできる！？
「あ、そうなんですか、じゃあ、どうするかはそのときご相談させてください」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
司法書士との待ち合わせは、５月１日土曜日１０時半。
妹にも招集をかけた。兄は興味がないらしく、不在である。
司法書士がやって来た。挨拶しお茶を出す。
母が思い出話（脱線話ともいう）を始める前にテーブルに書類を並べ、単刀直入に本題に入る。本編に関係の無いスピンオフは、時間が余ったときにでもやってくれ。
「先生、これが書類一式です。遺産分割協議書とそれから……」
私は最近実家に来るとＭＣになった気分になる。
司法書士は遺産分割協議書を確認しながら、令和３年度の固定資産税納税通知書、父の除籍謄本・改製原戸籍謄本、相続人の印鑑証明書・戸籍謄本・住民票をそれぞれ各１通ピックアップし、ファイルに入れた。
改製原戸籍謄本は出生から死亡までのものが必要で、流れを追って合計３部になった。
「先生、印鑑証明書が１月のものなんです。税理士は期限は大丈夫と言っていたんですけど」
「ああ、これですね、大丈夫です。金融機関は３か月有効なんですが、相続登記に限っては期限を設けていないんですよ」
「そうですか」
「亡くなったあとに取得したものならば大丈夫です」
「なるほど」
司法書士は雄弁に語り出した。
「というのはね、土壇場で相続の取り分を巡って“待った！”がかかる場合があって……それでそのまま相続が保留になってしまうことがよくあるんですよ。期限切れで、その度に印鑑証明書を取り直したら大変なのでね」
書類の確認が終わった頃を見計らって、
「先生、妹が相続する建物が未登記なんです」
ＭＣとして本日のテーマはちゃんと消化しないと。
「ああ、これですね……未登記の建物って多いんですよ～。必要ないとね、登記しないでそのままになっちゃうみたいで」
母「そんなねぇ、私達の代からすると登記しないなんて信じられない」
妹「え？ 登記していなかったじゃん」
すると母は記憶喪失みたいな顔をする。誰も責めたりしないのに。
妹は母にちゃんと突っ込む。私が突っ込むと角が立つけど、ぽっちゃり系の妹はキャラで許される。私の分の突っ込みも妹に託す。
司法書士は続けて、
「土地家屋調査士に頼んで表題登記をするのが間違いないでしょうけど、新築されたときの図面ってありますか？ 無いですか。費用は７～８万、１０万くらいになるかな。まあ、どちらでも。土地家屋調査士、紹介できますよ。その場合調査士が妹さんのご自宅に測量に行って。まあ、建物が未登記でも今回相続登記はできますけどね、どちらでも」
私は未登記物件でも相続登記ができるのかと、以前電話口で驚いたのだが、司法書士によく確認したところ、そんなわけなかった。
ですよね、幽霊に登記はできませんよね。
母と妹がまったり会話した結果、建物の登記は見送りとなった。
妹「銀行から借入れしないし、売ったりしないし、なにかあったらそのときでいいかな、登記は」
母「そうだね、今回はいいんじゃない」
要するに面倒臭くなったようだ。
妹「でも税金はちゃんと来ているんでしょ？ どうしてわかるの？ 未登記なのに」
司法書士「そこは市役所は抜かりないですよ。市の職員が定期的に巡回しているんです。それで新築したり、増築したりしたら見逃さずに税金を取るんですよ（笑）」
Googleだな！ Googleでなにか発見したら、現地を見に行くのかな？
市役所って凄いな。絶対に税金の取りこぼしはしないんだ。
妹と一緒に恐れ入った。今回の相続で心の残ったことの１つ。
【雑談】
最近、『荒神さま』という民間伝承を知った。
３か月ごとに方角を変え巡回する神様らしい。この『荒神さま』の方角に向かうと祟りがあるという……
神の視点（Google）でトレースし、税金徴収のために地域を巡回する市役所職員が、『荒神さま』とダブって見えるのは私だけ？
４月２４日土曜日に私と妹は実家に集合。相続人４人で書類に署名捺印した。
そこに税理士の紹介のＧ司法書士の連絡先のメモがあった。
私は「これからは全部私が仕切るから」と言い、メモの写真を撮った。
最初からそうすればよかった。その日のうちにＧ司法書士へ電話した。
「Ｇ先生ですか？ 税理士のＦ先生からの紹介で、え、まだお聞きになっていない？ 今回、相続登記をお願いしたいのです。こちらの住所は○町の□□です。昔、廃業するとき会社清算と会社名義だった土地を両親に書き替える登記でＧ先生にお世話になったことがあるそうです、母はＧ先生のことをよく覚えていました。はい、父が亡くなって。いえ、それで、遺産分割協議書と戸籍謄本や印鑑証明など書類はそろっています。はい、まず書類を確認していただいて、ご相談を。それで、できれば土日の休みにこちらに来ていただきたいのですが。ああ、よかった、じゃあ、今度の土曜日の１０時半ですね。えっと、実は相続物件の建物が１つ未登記でして」
司法書士は話しの途中で、以前行った実家の登記を思い出したようだった。
「ああ、あそこの、失礼ですがどなたかお亡くなりになったんですか？ ああ、お父さんが、そうですか、遺言書とかはあったんですか？ ああ、もう遺産分割協議書ができて、みなさんご了解されている、はい、はあ、未登記、まあ未登記でも相続登記はできるんですよ」
未登記でも相続登記はできる！？
「あ、そうなんですか、じゃあ、どうするかはそのときご相談させてください」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
司法書士との待ち合わせは、５月１日土曜日１０時半。
妹にも招集をかけた。兄は興味がないらしく、不在である。
司法書士がやって来た。挨拶しお茶を出す。
母が思い出話（脱線話ともいう）を始める前にテーブルに書類を並べ、単刀直入に本題に入る。本編に関係の無いスピンオフは、時間が余ったときにでもやってくれ。
「先生、これが書類一式です。遺産分割協議書とそれから……」
私は最近実家に来るとＭＣになった気分になる。
司法書士は遺産分割協議書を確認しながら、令和３年度の固定資産税納税通知書、父の除籍謄本・改製原戸籍謄本、相続人の印鑑証明書・戸籍謄本・住民票をそれぞれ各１通ピックアップし、ファイルに入れた。
改製原戸籍謄本は出生から死亡までのものが必要で、流れを追って合計３部になった。
「先生、印鑑証明書が１月のものなんです。税理士は期限は大丈夫と言っていたんですけど」
「ああ、これですね、大丈夫です。金融機関は３か月有効なんですが、相続登記に限っては期限を設けていないんですよ」
「そうですか」
「亡くなったあとに取得したものならば大丈夫です」
「なるほど」
司法書士は雄弁に語り出した。
「というのはね、土壇場で相続の取り分を巡って“待った！”がかかる場合があって……それでそのまま相続が保留になってしまうことがよくあるんですよ。期限切れで、その度に印鑑証明書を取り直したら大変なのでね」
書類の確認が終わった頃を見計らって、
「先生、妹が相続する建物が未登記なんです」
ＭＣとして本日のテーマはちゃんと消化しないと。
「ああ、これですね……未登記の建物って多いんですよ～。必要ないとね、登記しないでそのままになっちゃうみたいで」
母「そんなねぇ、私達の代からすると登記しないなんて信じられない」
妹「え？ 登記していなかったじゃん」
すると母は記憶喪失みたいな顔をする。誰も責めたりしないのに。
妹は母にちゃんと突っ込む。私が突っ込むと角が立つけど、ぽっちゃり系の妹はキャラで許される。私の分の突っ込みも妹に託す。
司法書士は続けて、
「土地家屋調査士に頼んで表題登記をするのが間違いないでしょうけど、新築されたときの図面ってありますか？ 無いですか。費用は７～８万、１０万くらいになるかな。まあ、どちらでも。土地家屋調査士、紹介できますよ。その場合調査士が妹さんのご自宅に測量に行って。まあ、建物が未登記でも今回相続登記はできますけどね、どちらでも」
私は未登記物件でも相続登記ができるのかと、以前電話口で驚いたのだが、司法書士によく確認したところ、そんなわけなかった。
未登記物件を抜かして
相続登記をするという意味だった。ですよね、幽霊に登記はできませんよね。
母と妹がまったり会話した結果、建物の登記は見送りとなった。
妹「銀行から借入れしないし、売ったりしないし、なにかあったらそのときでいいかな、登記は」
母「そうだね、今回はいいんじゃない」
要するに面倒臭くなったようだ。
妹「でも税金はちゃんと来ているんでしょ？ どうしてわかるの？ 未登記なのに」
司法書士「そこは市役所は抜かりないですよ。市の職員が定期的に巡回しているんです。それで新築したり、増築したりしたら見逃さずに税金を取るんですよ（笑）」
Googleだな！ Googleでなにか発見したら、現地を見に行くのかな？
市役所って凄いな。絶対に税金の取りこぼしはしないんだ。
妹と一緒に恐れ入った。今回の相続で心の残ったことの１つ。
【雑談】
最近、『荒神さま』という民間伝承を知った。
３か月ごとに方角を変え巡回する神様らしい。この『荒神さま』の方角に向かうと祟りがあるという……
神の視点（Google）でトレースし、税金徴収のために地域を巡回する市役所職員が、『荒神さま』とダブって見えるのは私だけ？
