第23話 税理士事務所に電話をしてみた

文字数 1,762文字

 私「佐久田と申します。○町の□□△△(母)が相続でお世話になっております。私はその娘です。ちょっと確認したいことがありまして」

女性従業員「今わかるものが外出中です。戻りましたら、折り返しお電話いたしますか?」
私「仕事中出られないので、またこちらからお電話します。何時頃お戻りですか?」

女性従業員「2時頃戻る予定です」
私「わかりました。2時過ぎにまたお電話します」
女性従業員「佐久田様ですね、伝えておきます。すみませんがよろしくお願いいたします」
私・女性従業員「失礼いたします」

 平日、遅番のお昼休みに税理士事務所へ電話したのだ。
母の了解はとってある。
母「そんなに気になるんなら電話してもいいけど、キツい物言いはするんじゃないよっ」
私「しませんよ~ただの確認だもん」

あ、もう3時だ。仕事中、またこっそり税理士事務所へ電話する。

先生「あ、佐久田さん、はい、お世話になっております」
すぐに先生に替った。先生は女性従業員から私の素性を聞いていたようで、すぐに話が通じた。

私「1月に相続の書類を提出した件で、念のため今後のスケジュールを確認したいのですが。印鑑証明書の期限があると思うので」

先生「ああ、お母様にはお話したんですが、確定申告があるので、ええ、ちょっと忙しくて、それで4月になったらやりましょうと……それで今年は確定申告の期限が延びて4月15日になりまして……それを過ぎたらと思っていたんですよ。印鑑証明書の期限は大丈夫ですから」

先生は、遺族からのクレームの電話だと思っていたようで、少々上っ調子だ。
先生から聞き出したスケジュールは、

・4月15日過ぎてから、相続財産の確定をするための書類(誰がなにを相続するとか)を作成し持参予定
・相続人が内容確認
・OKなら『遺産分割協議書』を作成
・相続人が『遺産分割協議書』に署名捺印して所有権移転の登記申請
・1週間ほどで登記完了

私「ではスムーズにいったとして、ゴールデンウィークがあるので、5月半ば頃に登記完了でしょうかね」
先生「ああ、はい、そうですね」
二つ返事、ちょっと怪しいな。


 私、この世の印鑑登録証明書の有効期限は、あまねく”3か月”とずっと思い込んでいました。(銀行等ではそうだったので)
今回、先生がはっきりと「印鑑証明書の期限は大丈夫です」と言い切ったのでネットで調べてみたところ、なんと、”遺産分割協議書”の印鑑登録証明書には、有効期限の定めはなかったのです。
思い込みで「印鑑証明書がー」「期限がー」と散々騒いでいてお恥ずかしい。この話はもうしないことにします。


 一応、母に電話で報告しました。先生から聞いたスケジュールを話したところ、

母「……そういう細かいことは言われてもわかんないよ。1年くらいのうちにやればいいと思っていたし」
私「1年!? そうやって年寄りや遺族が相続登記をしないまま放っておいて、忘れちゃって、あとでややこしいことになるんだよ」

母「相続を気にしているのはアンタだけだよ。アンタはね、こんなことより、(義父母の)仏壇を早く自分の家に持ってこないといけないよ」

あっ、そうだった!!

義父母の仏壇、お位牌が、夫の(もう誰も住んでいない)実家に置きっぱなしなのだ。
(定期的に夫が見に行ってはいるのだが)義母が亡くなってもう2年が経ってしまう。


 夫の実家の仏壇は、黒い要塞のように巨大で、シルバニアファミリーのような狭い我が家にはミスマッチなのである。我が家の寸法に合うような、超コンパクトでお手頃な新しい仏壇を購入しなければならない。
そして夫が言うには、デカ目のお位牌が4つあるので、それを1つにまとめなければ小さい仏壇には入らないとか。そして最後にお坊さんにお経をあげてもらって、魂(?)を移す一連の儀式が必要だとか。

やることいっぱいあるなーと思っているうちにズルズル今に至る……
たまには思い出していたんですけどね。


 親の葬儀で泣かない、義父母をリスペクトするような大層(たいそう)なことを言いながらも仏壇を放置している、信仰心希薄な癖に『凡夫』とか語っちゃったりしている、これはまずいな、ちょっとしたサイコパスだよ。

今まで親の言うことはだいたい聞き流していたのですが、今回はちゃんと響きました。
相続登記よりも、義父母の仏壇をしつらえることを優先することにします。


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