第18話 虫の知らせと超常現象①
文字数 1,965文字
第7話『骨上げとお清めと家族葬のデメリット』で、
「家族葬で通夜振る舞いをしなかったから、香典儲かったでしょう?」
といらぬことを言い、ただでさえ高血圧の母の血圧を上げた親戚D(40代女性、元ヤン)が、また返答に困るコメントをしたらしい。
「お義父さんが亡くなった日の朝、カラスが大きな口を開けてギャアギャア鳴いていてさ、私、これは何か悪いことがあるって予感がしたんだよね。私は霊感があるから」
母は顔を曇らせ「Dはそんなことを言うんだよ」
「フッ」
私は思わず失笑してしまった。
「生ゴミの日だったんじゃないの?」
母は占いや迷信にすぐ引きずられ、影響を受けるタイプの人間。私の身も蓋もない返しに少し肩の力を抜いた。
「そうだよね、カラスはいつもうるさいよね」
母は不眠症である。
母は眠れないとき、過去に他人から言われた呪いじみた言葉を反芻 したり、将来起こるかもしれない不幸を思い描く。不幸のイメージトレーニング。
そしてその片鱗が現実に姿を現し始めると、「やっぱりね」と(私から見ると)安堵するようなタイプ。
そんな母は、”魔”に付け入られないようにするための防御策として、あえてマイナスを取りにいくというところがあった。
マイナスを取りにいくという言い方は我ながらひどいな、『恩を売る』と言い換えるか。
母は親戚や知人から金の無心 をされたとき、返ってこないことを承知で金を渡すのだ。
私は小さい頃からその現場を目撃していた。借金をする人間は周りがあまり見えていないものだ。
母が長年、金を貸していた親戚が数年前に亡くなった。
そのとき「いったい、故人にいくら貸していたの?」と聞いたが、母は答えなかった。
故人の娘は長年医療関係で働いており収入がそれなりにあると推測されたため、故人が母からお金を借りる理由がよくわからなかった。そして母がどうしてお金を貸すのかも疑問だった。
きっと1回貸したからだろう。最初の1回を突破すれば、後はゆるゆるになりそうだ。これも依存ですね。
「実は故人にお金を貸していてまだ残高これだけあります、って遺族に言ったらどんな顔するだろうね。借金もマイナスの財産だから相続の対象だもんね」
そのときの私の軽口を、母は無視した。
***************
そういえば、兄も変なこと言っていたな。
父が亡くなった夜、同居の兄が寝ずの番をしたときのことだったらしい。
(寝ずの番とは、お線香の火を絶やさないよう遺体の近くで休むこと)
(後日、葬儀屋さんに頼んで、一晩中点いている円錐状 の渦巻き線香?を持ってきてもらった。最初から持参してくれていたら、私の中で葬儀屋さんの評価がもっと上がっていたのに……)
「夜中、ちょうど2時にピ――――って電子音がしたんだ。携帯じゃないよ。家電でもない。初めて聞く音。×××が、いたずらして知らせたのかな」
×××は父の名。兄は両親を下の名で呼び捨てにする。
「なにを知らせたのかね?」と私。
「さあ? 死んだけどまだここにいるよ、とか?」
父はそんなキャラだったっけ?
思い返せば、実家はそういう現象が起きやすかった。
私が中学生の頃試験勉強をしていたら、急に仏壇の鐘がチーンと鳴ったり(念のため仏壇の中を確認したが、物が落ちたりした形跡は無かった)、また別の日にはコンセントの入っていないラジオが流れ出し数秒後にフェードアウトしたり、誰もいない居間からクラシック音楽がやはり数秒流れたり、寝入りばな金縛りにあったとき大勢の声が聞こえたり。
他にも音に関してなにかあったような気がする。忘れちゃった。
それから実家にいると、妙な焦燥感で頭が重く肩が凝り消耗する。(笑)(それは怪奇現象ではない)
私の考察では実家の近く(といっても900メートルくらい離れているが)の山に、電波塔が立っているせいと勝手に納得している。
全部その影響ですよ、多分。
そういえば昔テレビで、超常現象を全部「プラズマが原因」で押し切る教授いましたね。(大槻教授?)
それにちょっと理由の無い音が出るくらい、どうでもいいです。
私は小さい頃ぜんそく持ちでした。無害な怪奇現象なんかより、ぜんそくの発作の方が断然怖かった。
そして昨日まで仲良くしていた筈の人から、急に無視されるようになったときも恐怖でした。
身体の不調と人間関係の方がよっぽどゾッとすることが多かったです。
そして貧困やDVや虐待など家庭内に問題があったら、超常現象など起こらないというか、気がつかないのではないか。死活問題の前では些末 なことですから。
超常現象は、余計なことを考える時間が多い人に起きやすいのではないか。(顰蹙 発言をしたという自覚はあります)
なので、昔は超常現象が多かったように思います。
精神病の症例も認知されていなかったし、娯楽が少なかったと思うので。
続きます。
「家族葬で通夜振る舞いをしなかったから、香典儲かったでしょう?」
といらぬことを言い、ただでさえ高血圧の母の血圧を上げた親戚D(40代女性、元ヤン)が、また返答に困るコメントをしたらしい。
「お義父さんが亡くなった日の朝、カラスが大きな口を開けてギャアギャア鳴いていてさ、私、これは何か悪いことがあるって予感がしたんだよね。私は霊感があるから」
母は顔を曇らせ「Dはそんなことを言うんだよ」
「フッ」
私は思わず失笑してしまった。
「生ゴミの日だったんじゃないの?」
母は占いや迷信にすぐ引きずられ、影響を受けるタイプの人間。私の身も蓋もない返しに少し肩の力を抜いた。
「そうだよね、カラスはいつもうるさいよね」
母は不眠症である。
母は眠れないとき、過去に他人から言われた呪いじみた言葉を
そしてその片鱗が現実に姿を現し始めると、「やっぱりね」と(私から見ると)安堵するようなタイプ。
そんな母は、”魔”に付け入られないようにするための防御策として、あえてマイナスを取りにいくというところがあった。
マイナスを取りにいくという言い方は我ながらひどいな、『恩を売る』と言い換えるか。
母は親戚や知人から金の
私は小さい頃からその現場を目撃していた。借金をする人間は周りがあまり見えていないものだ。
母が長年、金を貸していた親戚が数年前に亡くなった。
そのとき「いったい、故人にいくら貸していたの?」と聞いたが、母は答えなかった。
故人の娘は長年医療関係で働いており収入がそれなりにあると推測されたため、故人が母からお金を借りる理由がよくわからなかった。そして母がどうしてお金を貸すのかも疑問だった。
きっと1回貸したからだろう。最初の1回を突破すれば、後はゆるゆるになりそうだ。これも依存ですね。
「実は故人にお金を貸していてまだ残高これだけあります、って遺族に言ったらどんな顔するだろうね。借金もマイナスの財産だから相続の対象だもんね」
そのときの私の軽口を、母は無視した。
***************
そういえば、兄も変なこと言っていたな。
父が亡くなった夜、同居の兄が寝ずの番をしたときのことだったらしい。
(寝ずの番とは、お線香の火を絶やさないよう遺体の近くで休むこと)
(後日、葬儀屋さんに頼んで、一晩中点いている
「夜中、ちょうど2時にピ――――って電子音がしたんだ。携帯じゃないよ。家電でもない。初めて聞く音。×××が、いたずらして知らせたのかな」
×××は父の名。兄は両親を下の名で呼び捨てにする。
「なにを知らせたのかね?」と私。
「さあ? 死んだけどまだここにいるよ、とか?」
父はそんなキャラだったっけ?
思い返せば、実家はそういう現象が起きやすかった。
私が中学生の頃試験勉強をしていたら、急に仏壇の鐘がチーンと鳴ったり(念のため仏壇の中を確認したが、物が落ちたりした形跡は無かった)、また別の日にはコンセントの入っていないラジオが流れ出し数秒後にフェードアウトしたり、誰もいない居間からクラシック音楽がやはり数秒流れたり、寝入りばな金縛りにあったとき大勢の声が聞こえたり。
他にも音に関してなにかあったような気がする。忘れちゃった。
それから実家にいると、妙な焦燥感で頭が重く肩が凝り消耗する。(笑)(それは怪奇現象ではない)
私の考察では実家の近く(といっても900メートルくらい離れているが)の山に、電波塔が立っているせいと勝手に納得している。
全部その影響ですよ、多分。
そういえば昔テレビで、超常現象を全部「プラズマが原因」で押し切る教授いましたね。(大槻教授?)
それにちょっと理由の無い音が出るくらい、どうでもいいです。
私は小さい頃ぜんそく持ちでした。無害な怪奇現象なんかより、ぜんそくの発作の方が断然怖かった。
そして昨日まで仲良くしていた筈の人から、急に無視されるようになったときも恐怖でした。
身体の不調と人間関係の方がよっぽどゾッとすることが多かったです。
そして貧困やDVや虐待など家庭内に問題があったら、超常現象など起こらないというか、気がつかないのではないか。死活問題の前では
超常現象は、余計なことを考える時間が多い人に起きやすいのではないか。(
なので、昔は超常現象が多かったように思います。
精神病の症例も認知されていなかったし、娯楽が少なかったと思うので。
続きます。