第16話 余寒お見舞い申し上げます

文字数 863文字

 母に尋ねてみた。
「税理士から連絡あった?」

「いや、ないけど。この前、先生に書類全部渡しから、もう手続きは終わっているよ」
「いやいやいや、お母さん、これからだよ。これから遺産分割協議書と所有権移転の書類に署名捺印して登記するんだからさ」
実はこのやり取り、もう4回目。

「先生、ちょうど今、確定申告で忙しいんだよ」
「確かにそうなんだよね~。でも、来週か再来週に書類持ってきますって、先生、言ったんだよね? もう過ぎているなぁ、て思って」

「私そんなこと言ったっけ? あんた、なんでそんなに慌てているんだい」
エッセイのネタがないんだよ。
「いや、あのさ、印鑑証明書には期限があるからなぁ、て思って」

「印鑑証明書の期限って何か月なの?」
「3か月有効だけどさ、あんまりギリギリになるといけないから、遅くとも3月中旬までには登記してもらわないと」
「そうなの?」

 こんなんだったら、税理士ではなく、法務局の周りにわんさか居る司法書士を見繕って手続きしてもらった方が早かったかも……どうせ相続税はかからないし。
(母はすぐに税理士に連絡したので無理でしたが)


***************


 期限や手続きにはうるさい私だが、放置しているものがある。
届いた年賀状に対し、喪中だったことを記した『寒中お見舞い』のはがき発送である。
年の瀬の不幸だったので、喪中のはがきは間に合わなかったのだ。

 母と妹とお嫁さんは、1月に入ってから『寒中お見舞い』を出したと言っていた。ちゃんとしている、立派だ。
私も頭の片隅にはあったのだ。でも1月は忙しかった。残業も多かったし。


 そしてハッと気がついたら2月中旬になっていました。
寒中お見舞いの文言が使えるのは、2月3日までらしいです。それを過ぎると『余寒お見舞い』になるそうです。
『余寒お見舞い』のはがきなんてもらったことありますか? 「余寒?」ってなりますよね。

しらばっくれて『寒中お見舞い』で出そうかとも思ったけど、なんか、もういいかな、って思えてきた。
これを機に年賀状のやり取りをフェードアウトするのも有りだな……

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