第5話の1

文字数 587文字

我が心の洪水第5回■

海底の泥流の中に、一個の知性体が存在していた。主である。
その中枢記憶回路はムの一族の禁制地域にあった。

フネに攻撃をかけ、失敗した「黒き使徒達」は、主が創造しか生物だった。
『せっかくの私のプランをムダにしたか。黒き使徒達よ! 君達は私が創造した生物で、最悪の失敗作だ』
 フネに収容きれる目的で、ム=ウムを創り出すのに、何年かかったかと主は自問した。

ム=ウムの一族の先祖を主の想念で作り出し、成長繁殖させた。
何代にもわたり生成し、一人の真人として、ム=ウムを生みだしたのだ。
 その主と自ら名のる生物は、シュクセイキ後の地球の混乱期を生きのびてきた。

 彼主(シュ)の意識は、地球の海を総て被っていた。
主はシュタセイキ浚、生命体としてあるものから新しい形態へと進化していった。
彼の意識は、かつての人類の廃墟の中で、静かに、しかし確実に成長し、大いなる創造者として完成しつつあった。

 彼がフネの存在を認知したのは、彼の時間の経過からすれば、そう遠い昔のことではない。
いつからかフネは海を漂っていた。主の感覚枝がフネの存在に気づいた時、主はフネを敵として理解した。
ある種の不気味さを感じたのだ。

自分以外の巨大な知性体としてのそれに危惧を抱いたのだ。
フネは彼の思惑通りには動かなかったし、彼の干渉を拒絶していた。
フネは、主の世界の中で、意向に従わぬ唯一の異物であった。
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