第5話の2

文字数 759文字

主は、自分自身の記憶域を探索し始める。
それまでのフネに対する計画は瓦解していた。新たな攻撃法が必要だった。
自らの散在、「フネ」という概念で、フネ自らの記憶域の中をかきまわす。
過去、主は記憶をたぐる。戦闘のイメージが湧きあがってくる。

戦闘1戦い。
フネ。

戦闘フネ。
違う。

戦闘艦? 
確かシュクセイキ以前だ。

軍艦!
さらに記憶を手繰る。

潜水艦? 空母? 
明確なイメージ、形態が彼の心の中に呼び起こされてきた。

そうだ!
主はついに発見した。

シュクセイキ以前、人間達がそういった種類の船を建造していたことを。
主の感覚枝は全地球を巡っている。
つまり、海底世界に自分の神経網がはりまぐらせている。
軍艦を探すのだ。はるか昔、人類たちに作られ、その人類たちが放射線のため死に絶えた後、
何年かの間、自動操縦装置により無人で動き回り、やがて海に沈んていった何隻かの戦闘艦。
それらは、何世紀かの間、海底の泥流の中に埋れているはずだった。
彼は感覚枝を使い、軍艦の残骸を数隻見つけた。
過去の人類の遺産はまだ完全に朽ち果ててはいなかった。
比較的状態のよい艦二隻に浮力を与え、海面上に持ち上げた。
彼は記憶域から明確なイメージを固定した。
サビや付着物を、感覚枝で払い落とす。

不足部分を過去のイメージから複製した。残像がある。
その軍艦は古代、人によって原子力空母エンタープライズと呼ばれていた。
もう一隻は原子力潜水艦ソードフィッシュと名づけられていた。
二隻の艦の体裁を完璧に整え、装備を完了し、彼はフネヘと向かわせた。
艦には誰ひとり人間は存在しない。人間という存在の記憶がない。
すべて、自動で動く。ただ、主の思念のみがその内部機構を作動きせていた。
人が存在しない自動機械なのだ。
潜水艦のミサイル発射筒には、核弾頭が装備されたポラリス・ミサイルが複製されている。
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