混沌の山:2

文字数 2,551文字

リリスはマリアとガキ共を守っている。
ミカエルはブチ切れてラマシュトゥに突っかかっていきやがった。
そして俺様は無数に湧き出てくる雑魚どもの掃除ってわけか!!
クソッ!!
これは脇役の仕事じゃねーか!!
それにしてもこいつら……
あとからあとから湧いてきやがる。
殺しまくってるがキリがねえ。
「ルシファー!」
リリスが飛んできた。
「どうした!?おまえ、マリアは!?」
「大丈夫!強力な魔方陣で守ってるわ。それより――」
リリスは一方向を指さした。
「ミカエルが苦戦してる。雑魚は私に任せて行ってあげて」
「あいつがラマシュトゥに負けるとは思えねえな」
「普通ならね。でもミカエルはなんとか吸収された人間を助けようとしてる」
「チッ…柄にもねえ」
あの冷酷な天使のミカエルがなにを血迷ったのやら。
「それにこれ以上戦いが長引けばあなたの身体にも負担が増すわ」
リリスの言うことはもっともだ。
いかに悪魔の超魔力が使えても俺の身体は人間。
純粋なエネルギー体である本体のときとはわけが違う。
「わかった。任せたぞ」
「ええ」
うなずくリリスをあとに俺はミカエルのいる方へ飛んだ。
巨大なラマシュトゥと闘うミカエルの姿はすぐに発見できた。
「ラマシュトゥ――!!」
叫ぶと両手に溜め込んだ魔力をラマシュトゥ目がけて一気に撃ちはなった。
ラマシュトゥの巨体に直撃する。
「ぐおおっ…!」
唸るラマシュトゥ。
しかし俺の放った魔力の光弾は寸前のところでラマシュトゥの張巡らしている結界に防がれてしまった。
「ルシファーまで来たか!!」
「俺様はこいつのように虚弱じゃねえ。てめえを八つ裂きにしてやるぜ」
「ホホホホホッ、人間に染まった貴様にできるかな?」
「舐めるな下郎!!」
剣を振りかざして切りつける。
切りつけようとしたラマシュトゥの持つ恐竜の首に人間の姿が浮かんだ。
「うっ」
躊躇した俺の剣が止まる。
その一瞬の隙をつかれてラマシュトゥの槍から稲妻が放たれて俺を直撃した!!
「しまった!!」
咄嗟に結界で防いだがダメージも食らった。
この俺様としたことが!!
「無様ルシファー!!私に触れることもできぬか」
嘲笑うラマシュトゥにキレた。
もう許さねえ!!人間共なんざ知ったことか!!ぶっ殺してやる!!
「兄さん!待ってくれ!!」
ミカエルが俺を制止する。
「ラマシュトゥに吸収された人達は生きている!まだ生体反応があるんだ!」
「それがどうした!?」
「なんとか生かして助けたい」
ミカエルが俺を真正面から見据えて言った。
主の意志のみを遂行するミカエルが人間を助けたいと。
「ハッハ――!!仲良くお話ししている暇はないよ!!」
ラマシュトゥが稲妻を降らせて攻撃してきた。
避けながらミカエルに言う。
「助ける方法があるのか!?」
「体組織の構造を戦いながら探った。複雑に絡み合っているがなんとか把握した」
「それで?」
「ラマシュトゥを形成する瘴気のエネルギーを消し飛ばす魔力を撃ってくれ。同時に僕が人間を保護するよう同じ強さの結界を拡散した人間の部分にだけあてる」
「できるのか!?ちょっとでもタイミングがずれたら人間共も一緒に焼き尽くされるぞ」
「他に方法はないよ」
「わかったよ」
ラマシュトゥは10本に分かれたサソリの尾から竜巻や無数の針を撃ちだしてきた。
それを避けると俺とミカエルは二でに別れた。
「ミカエル。貸だからな」
「わかってるよ」
ミカエルは微笑むとラマシュトゥの攻撃をかわしながら後ろに回った。
さてと……
あいつの強力な結界を吹き飛ばして、尚且つ本体を消し去るくらいの超強力な一撃を放たねえといけねえ。
「オオオオ――ッ!!」
体内の魔力を瞬間的に増幅させた。
「させるか!!おまえらの考えなんざお見通しさ!!我が軍団よ奴らに増幅させる暇を与えるな!!」
ラマシュトゥが叫ぶと空間が裂けて無数の悪霊共が援軍に現れた。
まだこんなに隠していやがったのか!?
これじゃあ微妙なタイミングを必要とする攻撃に集中できねえ!!
悪霊共の一斉攻撃をかわすが嵩にかかって攻めてきやがる。
魔力を貯めながらラマシュトゥから一瞬、目が離れた。
「兄さん!危ない!!」
なにっ!?
ミカエルが叫ぶ。
俺の後ろからラマシュトゥが襲いかかってきた。
「死ね!ルシファー!!」
やべえ!!避けきれねえ!!
『郷!!』
そのときマリアの声と共に閃光が俺の目を眩ませた。
なんだ!?
「おおっ…こ、これは…!?」
ラマシュトゥの巨体を白色の光が貫いている。
他の悪霊共も無数の光に貫かれて動きを止めていた。
リリスか!?いや…この感覚は“主”と同じだ。
「まさか…マリアが!?」
ミカエルが言いながらまっすぐに伸びた光の元を見た。
俺も見る。
マリアがいるロッジの方向に巨大な光球がある。
そこから無数に光が伸びていた。
光球が膨張すると爆発したかのように光の奔流が破裂した。
そのエネルギーは悪霊の本体である瘴気を消滅させ空を埋め尽くしていた軍団を一瞬のうちに消滅させた。
ラマシュトゥだけが堪えていたが貫く光は人間達とラマシュトゥの身体を分離させた。
「これは!?どうしたの!?」
駆けつけたリリスが聞く。
「マリアだ。マリアの“主の力”は人間共を貫通してダメージを与えることなく悪霊のみを打ち消したんだ」
「すごい……」
ラマシュトゥを貫く光が太くなり完全に呑み込んだ。
「ぎゃああ――!!」
悲鳴を上げながらラマシュトゥの本体ともいうべき人間そっくりの身体が分離すると残された巨体は跡形もなく消え失せて意識を失った人間達が光の中に浮いていた。
「ラマシュトゥ!!人間と分離されたら手加減せんぞ!!」
ミカエルが黄金に輝く剣を振りかざして逃げるラマシュトゥに斬りかかる。
「おのれ!!」
ラマシュトゥは四本の腕で応戦するも、その槍ごと真っ二つに身体を切り裂かれた。
「おのれミカエル…疎ましい!!」
「恨み言はそれだけか?消えてろ」
切り裂かれたラマシュトゥにミカエルが手をかざすと巨大な神霊力で跡形もなく消滅させた。
終わった。
しかしマリアに助けられるとは思わなかったぜ……






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