文字数 1,030文字

漆黒の闇が無限に続く大宇宙。
星々のきらめきが届かない宇宙の果てに眩いばかりの光があった。
光は闇の中で燃え上がるように周囲を白色に照らしている。
あまりに強烈な輝きは見る者を焼き尽くしてしまうほどに見える。
それはまさしく闇の中で燦然とく“光”そのものだった。

光の中は灼熱の“光”が嵐のような轟音とともに渦巻いていた。
その音は宇宙のどんな音よりも大きく恐ろしい。
その中心に純白に輝く者がいた。
黄金に輝く髪をなびかせている。
その容姿は地上あらゆる芸術家が心血を注いでも創造しきれない美を湛えていた。
神々しく美しい――
背には純白に輝く白い翼を6枚。
大天使ミカエル。
彼はこの宇宙でそう呼ばれていた。

その周囲をキラキラと光り輝く結晶のような物がただよっている。
結晶はなおも輝くと小さな天使の姿になった。
「ミカエル様、エデンに行かれるのですか?」
ミカエルの周囲をただよう天使が話しかけた。
「ああ。行くよ」
ミカエルは美しい旋律のような声で応えた。
「もう終焉なのですか?」
別の天使が尋ねる。
「ああ」
ミカエルは愛しむような目で自分の周りを漂う結晶をながめながら言った。
終焉という言葉を聞いたときに表情が悲しみに曇る。
「このようなときに主のお側から離れなくてはいけないなんて」
「かわいそう…」
「お留まりにはなれないのですか?」
「私たちはミカエル様と共にいとうございます」
ミカエルは頭をふった。
「主の定められたことだから」
その一言で天使たちは沈黙した。
この宇宙を創造した“主”と呼ばれる存在。
気の遠くなるような悠久の彼方より宇宙に生命の息吹を与えてきた。
だが主は終焉の時を迎えようとしていた。
そのときは刻一刻と迫っている。
もう猶予はなかった。

大天使ミカエルはこの終末のときに地球(エデン)に産まれる新しい“主”に会いに行かねばならない。
そして導き、目覚めさせ、偉大なる力を行使して新しい世界を創造する。
これは宇宙が誕生した時からの定めだった。
主の定めた理。
「私がエデンに行くことを悲しむことはない。これは遥か悠久のときより主が定めしこと」
それを聞いた天使たちは悲しそうな顔をした。
「では行ってくるよ」
ミカエルは自分との別れを惜しむ天使達に微笑を見せると輝く翼を羽ばたかせ、光の嵐の海を泳ぐように下へ下へと飛び立った。

漆黒の空間に輝く光から小さな純白の光が分裂するように飛び出した。



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