不思議な少女

文字数 1,640文字

一週間が経った。
病院での検査もいつもと同じように異状なし。
だったら放課後に何かしたいなと思った。
性格からして運動部が絶対いいんだけど……
きっとダメだろうな。
でもお願いしてみようか!?
……
やっぱダメだなって。
忙しいパパや神尾先生を困らせるだけ。
一週間も経つとクラスの子はみんな復帰していた。
あんな騒ぎなんてなかったかのように、みんなが笑顔で話している。
何事もない幸せな日常。
放課後になって私は一人、またも時間を持て余した。
郷と白神先輩の周りには相変わらず女子が囲んでるし。
また教会にでも行ってみよう。
あそこの雰囲気を私はこの前行ったときから気に入っていた。
もう修復工事も終わったらしく壁を囲んでいた足場もない。
小さい階段を上がって扉を開けた。
中に入ると採光塔から降り注ぐ光の中に一人の女性が立っていた。
光のせいでシルエットしかわからない。
スラッとしていて髪が長い。
その人が振り向く。
「あっ…」
その顔を見て思わず声が漏れた。
凄い綺麗な人……
なんていうか、ゾッとするような美しさ。
明るく染めてカールした髪が綺麗な艶を出している。
鼻筋がとおって色は透きとおるように白い。
ミニマムなデザインのジャケットにパンツという服装が彼女のスタイルの良さを際立たせていた。
「どなたですか…」
制服じゃないから部外者っていうのはわかった。
「ごめんなさい。見学してたら教会があったから、ちょっと覗いてみたくて」
話しながら女性がこっちに歩いてくる。
「そ、そうなんですか」
「あなたは高等部ね?何年生?」
「私は一年です」
「そう。じゃあ同じ歳だ」
うそっ…てっきり年上かと思った。
雰囲気がとても落ち着いてるし。
「年上かと思った?」
「あ…その、落ち着いてたから」
「来週からこの学校に転校してくるの。今日はその説明を聞きにきたんだ」
くだけた口調で彼女は言った。
「私、二宮リリ。よろしくね」
二宮リリはそう言って微笑むとスッと右手を出した。
「私は高原マリア。よろしく」
私も右手を差し出して二宮さんの手をにぎった。
「ここってけっこう自由な学校なのね。バイクで通学してる人とかいろんな人を見たわ」
「う~ん…それにはいろいろ事情があってさ…」
私は詩乃から聞いた姉妹校と合併した経緯をかいつまんで話した。
二宮さんと会話していると初対面なのにもう打ち解けているような気になってくる。
一通り話し終わる頃には、私は二宮さんと友達になりたいと思っていた。
「高原さんって彼氏いるの?」
「ええっ…」
なんで急にそんな話題に!?
「いや~これがいないんだ」
半分照れ隠しに笑いながら言った。
「私も。興味が持てなくって」
「そうなの!?」
「なんかみんな子供に見えちゃうっていうか」
「そりゃあ二宮さん綺麗だもの。よっぽどじゃないと釣り合わないよ」
この人の横に立って釣り合いそうなのって……
郷と白神先輩… あとは詩乃に純くらいかな……
「高原さんだってとっても綺麗だよ。さっき見て思ったの。あなたがここに入って来たときにパッと陽がさしたみたいになったわ」
「またまたぁ!上手いなぁ~そっちこそ私なんか立ってるの見ただけで見惚れちゃったから」
そう言うと二宮さんはクスッと笑って扉の方へ歩き出した。
「いいお友達になれるといいわね」
扉の取っ手に手をかけた二宮さんが振り向いて言う。
「なれるよ!ついでにクラスも一緒だと最高だけど」
「なれるわよ。一緒のクラス」
「えっ」
クラスって私はまだ自分のクラス言ってないけど……
二宮さんは扉を少し開けるとするっと出て行った。
開いた扉の隙間から強い風が一気に流れ込んできた。
「キャッ!!」
バタン!!と大きな音を出して扉が閉まった。
慌てて扉を開ける。
「二宮さん!」
外に出て呼んでみたけど二宮さんの姿はどこにもなかった。
彼女が外に出てからものの十秒くらいしか経ってないのに……




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