第25話「うっかり家とか消し飛んでるかもしれへん」

文字数 2,311文字

~前回までのあらすじ~

やべ~魔法にすげ~勢いでやられそうになった2人。

その魔法を打ち破るべく、師匠を頼ることに。

2人は師匠がいるニバの街へと直行したのであった。




~ニバの街~


到着! 門番の目を気にせんでええって素晴らしい事やな
それが普通だけどな
で、今から師匠ハウスに行くわけやけど……
……
生きてるかな……
心配のスケールがでけえよ。生きてはいるだろ
気抜いたら飲み食いせんままで何日もおるからなあ。

いつ死んでてもおかしないであの人

でもこの前会った時は数年ぶりとかだったんだろ?

今回はたった数週間だし大丈夫だって

やと思うけどなあ
とにかく師匠さんの家に行けば分かるだろ。行こうぜ
うっかり家とか消し飛んでるかもしれへん
ねーよ。うっかりで家が消し飛んでたまるか
いや、でも1回……
あったのっ!!?
んーまあ、とりあえず行ってみるか。行ってみな分からんわ
お、おう……自分の身が心配になってきた




~師匠ハウス前~


…………


ガチャッ


あった! よかった! 存在はしてる!
見つかるとまずいんだろ? 早く入れ
なんやうるさいなあ。せっかちな男はモテへんで?
うるせえ頭でっかち(ドンッ)
いたぁーっ! 蹴ることないやんもぉ~


バタン


さて……。思ったより生活感のある家だな。

ちょっとホコリっぽいけど

ああ、それウチが独り立ちした時から微動だにしてへんと思う
1階は使ってないって訳か?
ほぼな。場合によっちゃ1年以上2階から降りてきてへんかも
……それって、外に1度も出てないんじゃ
かもなぁ
……どうやって生きてるんだ?
せやから今度こそ死んでるかもしれへんって心配しとんねん
なるほどね……
ま、生きとったら2階の研究室におるはずや。行くで(コツコツ)
おう(コツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……なあ(コツコツコツコツ)
ん?(コツコツコツコツ)
いや……なんでもない(コツコツコツコツ)
そーお? ふーん(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……なあ(コツコツコツコツ)
なんやのん(コツコツコツコツ)
この階段……やけに長くないか?(コツコツコツコツ)
そお? まあそのうち着くよ(コツコツコツコツ)
まあ、そうだろうけどさ(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
……(コツコツコツコツ)
――なげえよ!! いつまで続くんだこの階段!!
ぶはははははは!! あーおもろ!!
分かってて登らせてんだろ!!

2階に登るっつって全然2階が見えてこないってどういうことだよ!!

だんだん薄暗くなっていく一方じゃねーか!

いやー自分がやんのは癪やけど、人が慌ててる分にはおもろいなコレ
笑ってる場合か。どういう事か説明しろ
いやーこれな。

師匠が許可出さへん限りいつまで経っても2階に着かへんねん。

気付いてないだけやから呼んだらええんやけど、面白いから黙っといた

よし計画的犯行ってことだな。後で覚えとけよ
で、ここから大事や。もし呼んでも2階に着かへん場合。

その時は珍しく外に出てるか……

……だな。まず呼んでみようか
せやな……
すぅーっ……
姫昌ーっ! あっ間違えた師匠ーっ!
絶対わざとだろ。なんだキショウって
周の文王
聞いても分かんないやつだった
で、たぶんこれで気づいたはずや。

こっから登っていくやろ?(コツコツコツコツ)

おう(コツコツコツコツ)
すると……(コツコツコツコツ)
……おお(コツコツコツコツ)
(コツコツコツ、コツ!)扉が出てくる
すごいな。どうやってんだ?
そこは気にせんでもええよ。開けるで(ガチャッ)






おひさしー! 師匠、帰ってきたで!
おかえり。30年ぶりだったかな?
うーん、まずウチ30年も生きてへんからね?
あれ? そうだったかな。ふふ。実は近ごろ物覚えが悪くなってね
うん……よう知ってるよ
それで、そっちは?
あ、いや、俺はその……
あっ、そういえばこういう奴やったな……。

なんや、思い出したみたいにコミュ障発揮して。もっとハキハキ喋りや

お、おう……えっと、カイカです……
そうか。彼とはどういう関係なんだい
縁があっていま2人で旅しとるんや。なかなか出来がええ戦士やで。

前来た時もおったけど、邪魔やから外で待たせてた

そうか。なんだか、娘が婚約者を連れてきたような感覚だね。ふふ
なんで母親ですらない父親の立ち位置なん?

婚約者ちゃいますよ、もう

……まあカイカもこんな美少女にお供できて嬉しいやろうし、

もしウチに惚れてもしゃーないと思うけどなっ?

それはない
なんでそこだけハッキリ喋んねん
それで、どんな証言……違うな……用件か。用件なんだい?

その様子だと、時間ができたから戻ってきたわけじゃなさそうだけど

そうそう。その話に入らな。

カイカ、ちょっと手短に説明するからその辺座っといて

おう
でね、師匠。実はいまヨミドに仕事頼まれてるんですわ
ヨミドというのは誰だったかな?
ああ、そっからか……ギルドのリーダーでっせ師匠
ギルドとは、何だったか
……あのね、ギルドは冒険者の組織みたいなモンですわ。

師匠も昔はギルドにおったでしょ?

へえ。初耳だ。それはメモしておいた方がいいのかな?
……ごめん、カイカ
……なんだ
「手短」はちょっと諦めて
みたいだな……
「あの人はヤバい」の意味がようやく理解できてしまったカイカなのであった。

前回説明したことも綺麗さっぱり忘れていたどころか、それ以外も忘れた師匠。

このあと懇切丁寧に説明してやっと話が進められる状態になったとか。

次回、おはなしする。お楽しみに!

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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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