第21話「第二章だろうと自分の持ち上げ方がすげえ」

文字数 3,090文字

~第一章のあらすじ~

偶然出会った戦士のカイカと道具屋の山田は、色々あってギルドから追われる身に。

貴重な魔導書をギルドのリーダーに渡す事で解決したが、ここで会ったのも何かの縁。

そう言わんばかりに2人は共に次の冒険に向かったのであった。第二章始まるよー!

ある時な、店のなかにクモがおってん
へぇ、クモ
そう。んで道具屋かて立派な店やん。

虫なんかおったら印象悪なるわーって、始末したろ思てん

まあ確かに巣なんか作られると困るな
でもな。ウチは考えたんや
ほう?
容姿端麗明朗快活温故知新博学多才花鳥風月のウチは考えた……
第二章だろうと自分の持ち上げ方がすげえ。

あと温故知新って人を褒める時に使う言葉じゃないからね?

ふと思ったんや。このクモがいったい何をしたんやと。

ただ一生懸命生きてるだけや。そう考えるとクモが可愛くなってきてな

情が移ったわけね
そう。やからもう放っとくことにしたんや。

ウチはクモ蔵を見守りながら1日店番しとったんよ

名前までつけてる
んで、次の朝起きてきたらクモ蔵がおらんかったんやけど、

どっか行ったんかなって思って掃除してたら……。

ふと、床の上で仰向けになってるクモ蔵を見つけた

あー、死んでたってこと?
そうや。結局ウチがどうこうせんでも老衰で死ぬ運命やったんや。

命ってはかないもんやな~って思ったわ

まあ寿命で死ねただけよかったのかもしれないよ
……っていうのが
っていうのが?
カイカと会う……1ヶ月と4日前の話や
……今回の話に関係は?
ない
……
……
……





……
……
……
……で、何の話やったっけ?
……
リーダーさん「こっちのセリフだ」って顔してんぞ。

なんで冒頭から全く関係ない話をしてんだお前

いやー、いよいよ第二章突入やん?

第二章やろうと全く計画性なく進めるっていう意思表明をせんとな

その意志を表明する必要はない
この辺で第二章が終わって第三章に突入するパターンとかどうや?
いくらなんでも第二章短すぎだろ
……出ていったと思ったらほんの2時間で戻ってきて、

かと思ったら通した矢先に全く関係のない話ときた。

いい加減にしないと追い出すぞ

ほ、ほらギルドのリーダーさんも怒ってるじゃねぇか!

真面目にやろうぜ、な!

ヨミドが嫌がってるんやったら好都合や。

第三章突入すんでー!

俺さ、あんまり聞き分けない奴には鉄拳制裁も仕方ないと思うんだよ
ご、ごめんやん。ウソやん。ほんの冗談やん。ぴーやぴーや
オラッ、早く戻ってきた理由をリーダーさんに説明しろ!
わ、分かった分かったって。もう怖いなあ。

しゃーないから説明したるわ、ヨミド

……それで、用件は
……
……?
いつ見てもムカつく顔しとんなお前。ぷぷっ
(バッ)
(ゴチンッ)いっっったあああぁぁーーーーーー~~いあいあいあいあいあ~~ああ~~~~いいい~~~!!!
お前が悪い。早く続けろ
戦士の彼に同意する
いったいいったいもぉ~……! ちょっとした出来心やん!

女の子に手あげるとか最低やで最低!

お前のことは女とも子供とも思っちゃいねーよ。早く続けろ
っくぅ~。……そうやったな。で、ヨミド。

この辺り、副都周りで起きてるデカい騒ぎについて知っとるやろ?

カデナ遺跡のことか?
そう。あの辺で魔物が暴れてるらしいやん。

その情報を聞き込みまわっててんけど、

ギルドも本腰入れて調査してるって聞いてな。なんか情報ない?

あるにはある。しかし、アレに挑戦するつもりか?
うん。がめついカイカがお宝欲しいって言うてな。

ウチはカイカのおもりや

お前にだけはがめついって言われたくねー
……私がお前に頼んだ仕事があっただろう
ああ、高額の報酬がもらえるやつね
実はあれは――
――この遺跡調査を頼もうとしてたんやろ?
えっ!?
……なぜ知っている?
街の噂で聞いたんや。ギルドの幹部クラスが討伐しに行ったけど音信不通やって。それだけの魔物やからこそお前がわざわざ副都まで出向いてきたんやろ
……
ギルドの幹部でもやられたとなったら、ギルドの威信に関わる。

軍にナメられるわ国民の不信を買うわやから公表できへん。

せやから周りに噂の事実を悟られへんように、極秘でここに来た。

お前が直々に動くって相当重い事態やからこっそりとな

そうだ
で、とりあえず来たけどまだ作戦が立ってへんか、

あるいは準備中ってのが今の状況ちゃう? どう?

その通りだ。現在、各地のメンバーに集合をかけている最中だ
そうか。でも戦力は多い方がええ。状況が未知数やからな。

そうなるとウチの力も借りれるもんなら借りたい。って話ちゃう?

ああ。だからお前に協力を仰げないか確認した。

遺跡調査ということは、お前が受諾に前向きなら話そうと思っていた

うん。そういうことやな。せやからついでにその仕事も受けるわ。

どうせ目的は同じやしな。なんで、情報を包み隠さず教えてな

分かった。受けるんだな
お前のことは気に食わんけど、まあええわ。

どうせ行くんやったら金貰えたほうがええし

払う報酬は2人分か?
……え? あ、いや俺は
そう。カイカとウチで2人分の報酬よろしく~
お、おい何言ってんだよ。お前がもらった仕事だろ。

俺は報酬をもらう理由なんかないぞ

なーにシケたこと言うてんねん!

どうせ一緒に行って戦うんやから金貰う権利は十分あるで!

でも……
別にこちらとしては2人分でも構わない
ええ? い、いいんですか?
君も有能な戦士だと聞いている。

ギルドは有能な冒険者に投資を惜しまない。

もし君が望むなら、成功した際にギルドの役職を用意する

え、俺がギルドの……?
……
ギルドも最近は大規模な戦闘続きで人材が減りつつある。

君のような若くて勇猛な戦士がいれば頼もしいというものだ。どうだ?

……いや、俺はいいです。そういうのって向いてないと思うし。

お金だけもらえればそれで十分すぎます。

それでもよければ俺にも仕事を受けさせてください

そうか。残念だ。

では仕事は君にも受けてもらい、報酬は金のみとする

ふふん。カイカ
ん?
こいつ、どうせ後払いやから太っ腹なだけやで。

失敗したら金払わんでええし、成功したら金払うだけの価値はある。

気ぃつけや~おだてられてるだけやで~。危なかったなぁ~

こ、怖いこと言うなよ……
まああながち間違ってはいない
事実なんだ
しかし、それは見方を変えればの話だ。

成功すれば金を出す用意はあるし、役職だって用意してもいい。

今回は金だけだが、2人ともその条件で別に文句はないんだろう?

まあな。

お前がカイカを取り込もうとしてんのがバレバレやったってだけの話よ

彼に選択肢を与えただけだ。ギルドは彼のような人材を歓迎する
分かってるよ。やからカイカの選択に口出しせんかったやろ。

せやけど1回拒否した以上、もう妙なことすんなよ。お前

まるで私が舌先三寸で彼を引き入れようとしているかのような口ぶりだ。ただの勧誘にそこまで気を張る理由でもあるのか
それはお前が――
ストップ! 2人ともその辺にしてくれよ。

もうお互い協力するって決めたのに言い争ってどうすんだよ

……彼の言う通りだ。謝罪する
命拾いしたn……ウチも悪かった。謝るわ
なんか片方本音が出かかってるけども。とにかく仕事の話に入ろう。

俺たちはひとまず仲間なんだから

せやな。じゃあヨミヨミ、詳しいこと話してや
ヨミヨミ? ……まぁいい。詳しいことを話そう。

ハッキリ言うが、今回の件……。

調査に向かった者は全員消息不明の危険な任務だ

カイカの行きたがっていたダンジョンと、山田に依頼があった仕事は偶然一緒だった。

そんなわけで情報とお金を得るため、ヨミドとケンカしながらも協力することに。

今回は危険な任務らしく、カイカと山田はどうなってしまうのか!

そんなわけで第二章の始まりです。次回お楽しみに!

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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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