第16話「やあ。ぼく魔導書! よろしくね!」
文字数 2,245文字
~前回からのあらすじ~
長い旅路を乗り越え、ようやく目的の副都へたどり着いた2人。
と思ったらその門前でギルド最強の暗殺者が待ち構えてた。ひどい。
こっち来たで。カイカ、悪いけど喋りはウチに任せて黙っといて。
話とかも適当に合わせてや
指名手配の2人だな。私はギルドの幹部ハイロ・アナグレタだ。
お前たち2人には造反の疑いがかけられている
本来ならこの場で始末してもいいが、こちらの調べが不足しており
事実無根の疑いがかかっているという可能性もある
よってまずは事実調査が必要となる。大人しく捕まれば命は取らない。神妙にして武器を――
……神妙に武器を捨て、こちら側に降伏せよ。
もし濡れ衣であった場合はただちに身柄を開放し――
――濡れ衣だった場合はただちに身柄を開放する。
有罪だった場合はもちろんしかるべき処分を以て断罪し
なんで分かってるんっすか!
ぽけーっとしてる方がフェイクの可能性もあるじゃないっすかぁ!
ぽけーっとしてる方が素やからバレんねん。バレバレや。
言い回しとか仕草とか芝居がかっとんの。厨ニ臭いっていうか。
「どこまでこのキャラで通すつもりなんやろ」って思たわ
(……とか言って、俺は全然気づかなかったけどな。
威圧的なのが素じゃないとか何で分かったんだよ)
い、いいじゃないっすか! ギルドの幹部ともあろうものが
「○○っす」じゃ格好がつかないんっすよ!
神妙に武器を捨て、こちら側に降伏せよ(キリッ)
キャーカックィィー↑↑
それにしても、数週間ぶりっすね。
まさかお2人が指名手配されてるとは思わなかったっす。
さては自分と会ったのも偶然じゃないんっすね?
「私と出会ったのも偶然ではないのだな」とか言わんでええの?
も、もうそのキャラのことは忘れてほしいっす……。アレ、結構疲れる上に恥ずかしいんっすよ……
ふふん。せやで。ヨミドに会った時お姉ちゃんの事は聞いてたんや。
見かけたのはたまたまやけど、助けたのは計算やで
あれが単なる善意じゃなかったとは悲しい限りっすねえ。
ヨミドさんとまだ仲が良かった頃に聞いたんっすか?
カマかけてる? ウチとヨミドが仲良かったことなんか1回もないで。
どうせあいつからウチと会った時の話は聞いてないんやろ?
それでウチから情報を引き出そうって魂胆かな?
あちゃあ。失敗したっすねえ。
余計なことをするといつも失敗するんっすよ
まだ何か企んでそうやけど、やめといた方がええで。
お姉ちゃん人を騙すの下手くそやから
(あの緊迫した状態からよくここまで話を運べたな。
山田、お前心でも読んでんのかよ?)
まあ提案としてはさっき言ったまんまなんっすよ。
有罪だろうが無罪だろうが大人しく付いてきてほしいっていう
……もうその反応が有罪だと自白してるようなモンっすよね
まあウチとしてはギルド側が悪いんやけどな。
色々鼻持ちならんことがあったんや。
そっちからしたらウチが悪いんやろけども
……まぁ、そういうことになるっすねえ。
軽傷とはいえ、ギルドのメンバーが2人やられてるっす
あ、軽傷やったん? 消し炭にするつもりで撃ってんけどな
あの、話し合う気あるんっすか? ケンカしたいんっすか?
冗談やって。生きてるのもちゃんと確認して放っといたし
……じゃあ、大人しく連行される気はないんっすよね?
それなら解決する気はあるんっすか? このまま逃げるつもりとか?
そうやないのはだいたい予想ついてるやろ。
逃げるつもりやったらわざわざヨミドの所まで来たりせーへん。
ウチらに解決する気があるのは分かってるはず
ウチらはな、ヨミドにこれを渡せば解決すると思ってるんや(スッ)
(やあ。ぼく魔導書! よろしくね!
アイコンとして出るのが存在意義だからもう喋らないよ!)
さあ? ウチには何も聞こえんかったで。
で、この魔導書はすご~~いレアな本でな
この本を渡して誠心誠意弁解したら、和解してくれると思うねん。
だからここまで来たわけや
でも、捕まったらこの魔導書だけ取り上げられて、
ウチらは投獄される可能性大や。対等な和解の交渉しよう思ったら、
その事態は避けなアカン訳や。
ダメっす。全部ウソでヨミドさんを殺すつもりかもしれないっす
この本で和解してくれるか交渉するから、通してくれ! と言ってみたがダメだった。
なにやらギルドの暗殺者ハイロにも考えがある模様。
次回、ついに戦闘とかしてほしいと思います。
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