第16話「やあ。ぼく魔導書! よろしくね!」

文字数 2,245文字

~前回からのあらすじ~

長い旅路を乗り越え、ようやく目的の副都へたどり着いた2人。

と思ったらその門前でギルド最強の暗殺者が待ち構えてた。ひどい。

……(ザッザッザッ)
こっち来たで。カイカ、悪いけど喋りはウチに任せて黙っといて。

話とかも適当に合わせてや

了解




……(ザッ)
……
……
指名手配の2人だな。私はギルドの幹部ハイロ・アナグレタだ。

お前たち2人には造反の疑いがかけられている

……
……
本来ならこの場で始末してもいいが、こちらの調べが不足しており

事実無根の疑いがかかっているという可能性もある

……
……
よってまずは事実調査が必要となる。大人しく捕まれば命は取らない。神妙にして武器を――
ふっ
……何か?
いや、いや。何もあらへんで? 続けて続けて
……
……神妙に武器を捨て、こちら側に降伏せよ。

もし濡れ衣であった場合はただちに身柄を開放し――

ふふふっ
ふっ
――何か
いやもう、ホンマ何もないから。どうぞ続けてぇな
そうそう。続けて続けて
……
……
……
――濡れ衣だった場合はただちに身柄を開放する。

有罪だった場合はもちろんしかるべき処分を以て断罪し

ふっ
くっ












なんなんすか もぉーーー!!!
あはははははははっ! やっぱこっちが素やん!!
ははははははっ!!
なんで分かってるんっすか!

ぽけーっとしてる方がフェイクの可能性もあるじゃないっすかぁ!

ぽけーっとしてる方が素やからバレんねん。バレバレや。

言い回しとか仕草とか芝居がかっとんの。厨ニ臭いっていうか。

「どこまでこのキャラで通すつもりなんやろ」って思たわ

(……とか言って、俺は全然気づかなかったけどな。

 威圧的なのが素じゃないとか何で分かったんだよ)

い、いいじゃないっすか! ギルドの幹部ともあろうものが

「○○っす」じゃ格好がつかないんっすよ!

神妙に武器を捨て、こちら側に降伏せよ(キリッ)

キャーカックィィー↑↑

もぉ~勘弁してほしいっす~!!!
(そしてイジりがひどい)






それにしても、数週間ぶりっすね。

まさかお2人が指名手配されてるとは思わなかったっす。

さては自分と会ったのも偶然じゃないんっすね?

「私と出会ったのも偶然ではないのだな」とか言わんでええの?
も、もうそのキャラのことは忘れてほしいっす……。

アレ、結構疲れる上に恥ずかしいんっすよ……

ふふん。せやで。ヨミドに会った時お姉ちゃんの事は聞いてたんや。

見かけたのはたまたまやけど、助けたのは計算やで

あれが単なる善意じゃなかったとは悲しい限りっすねえ。

ヨミドさんとまだ仲が良かった頃に聞いたんっすか?

っんーん
カマかけてる? ウチとヨミドが仲良かったことなんか1回もないで。

どうせあいつからウチと会った時の話は聞いてないんやろ?

それでウチから情報を引き出そうって魂胆かな?

あちゃあ。失敗したっすねえ。

余計なことをするといつも失敗するんっすよ

まだ何か企んでそうやけど、やめといた方がええで。

お姉ちゃん人を騙すの下手くそやから

そうっすねえ。じゃあ本音で話すっすよ
うん
(あの緊迫した状態からよくここまで話を運べたな。

 山田、お前心でも読んでんのかよ?)

せやで
おい、マジで読むな
ウソウソ。今のは顔に出てたよ
今こっち見てなかったよな? お前
……?
気にせんでええで。話したいこと言ってもうてや
そうっすか? じゃあ話すっす




まあ提案としてはさっき言ったまんまなんっすよ。

有罪だろうが無罪だろうが大人しく付いてきてほしいっていう

ウチ大人ちゃうから大人しくついていかれへ~~ん
……もうその反応が有罪だと自白してるようなモンっすよね
分からんで? 実は濡れ衣着せられてるかもしれへん
じゃあ濡れ衣なんっすか?
正真正銘ウチの仕業で~~す! イェーーーイ!!
……
(なんかごめんなさい……)
まあウチとしてはギルド側が悪いんやけどな。

色々鼻持ちならんことがあったんや。

そっちからしたらウチが悪いんやろけども

……まぁ、そういうことになるっすねえ。

軽傷とはいえ、ギルドのメンバーが2人やられてるっす

あ、軽傷やったん? 消し炭にするつもりで撃ってんけどな
あの、話し合う気あるんっすか? ケンカしたいんっすか?
冗談やって。生きてるのもちゃんと確認して放っといたし
……じゃあ、大人しく連行される気はないんっすよね?

それなら解決する気はあるんっすか? このまま逃げるつもりとか?

そうやないのはだいたい予想ついてるやろ。

逃げるつもりやったらわざわざヨミドの所まで来たりせーへん。

ウチらに解決する気があるのは分かってるはず

その解決法は?
ウチらはな、ヨミドにこれを渡せば解決すると思ってるんや(スッ)
(やあ。ぼく魔導書! よろしくね!

 アイコンとして出るのが存在意義だからもう喋らないよ!)

なんか喋ってないっすか?? この本
さあ? ウチには何も聞こえんかったで。

で、この魔導書はすご~~いレアな本でな

なるほど
この本を渡して誠心誠意弁解したら、和解してくれると思うねん。

だからここまで来たわけや

なるほど
でも、捕まったらこの魔導書だけ取り上げられて、

ウチらは投獄される可能性大や。対等な和解の交渉しよう思ったら、

その事態は避けなアカン訳や。

ほうほう
というわけで、今から交渉してくるから通してや♪
ダメっす。全部ウソでヨミドさんを殺すつもりかもしれないっす
アルェー??
拒否られてんじゃねぇか
この本で和解してくれるか交渉するから、通してくれ! と言ってみたがダメだった。

なにやらギルドの暗殺者ハイロにも考えがある模様。

次回、ついに戦闘とかしてほしいと思います。

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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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