第22話「少ない! もう1億!」

文字数 2,453文字

~前回までのあらすじ~

現在2人がいる副都の周辺で、魔物が暴れまわっているらしい。

それをどうにかするため、ギルドのリーダーは2人に仕事を依頼することに。

いったいどんな仕事なのだろうか。

まず、事の経緯を説明する。説明する、が……
真面目に聞くように。話に茶々を入れたり、寝たりするな
何言うてんねん。金がかかってるんやからそんなんせんわ。

いらん心配せんとはよ話せ

なら良いが。では話す
うん
お願いします
……今から半年ほど前の話だが
スヤァ
フリの回収が早すぎる。せめてもうちょっと耐えろ
こんなクソ真面目な話聞いてられんわカイカ聞いといてグゥ~
わぁ、なんて的確な寝言なんだろう!
……半年ほど前、

カデナ遺跡に向かった冒険者が戻ってこないという報告が相次いだ。

あそこは元々、危険な魔物も出没するようなダンジョンではあったが

半年前を境に行方不明者の報告が急増した

(リーダーさん、もうスルーしだした)
その後、この急変化の原因を調査するため、

二度に渡り調査団を送った。しかしどちらも消息不明になった

両方とも、ですか
そうだ。非常に残念だが、彼らでは実力不足だったようだ。

そこで魔法が使える幹部を含めた熟練の調査団を送り込んだが……。

結果はさっきそいつが話したとおりだ

その調査団も帰ってこなかったんですね
……そういうことだ。まだ表沙汰にはしていないが、

幹部までやられた事実が広がるとギルドの名声が落ちる。

また、副都周辺の住民も不安になるだろう

そんな危険なダンジョンが身近にあったら恐ろしいですもんね。

安全な場所を探して、この辺りから人が離れていってしまう

それを避けるため、幹部がやられた事実は

遺跡の脅威を無くしてから公表したいと思っている。

そのために遺跡攻略は急務。現状、あの辺りの魔物も抑えられていない

……そのために
う~ん……はい寄ってらっしゃい見てらっしゃい只今この麻痺薬がお買い得になっておりますよ~この薬を飲めば身体の麻痺が和らぎ1時間もすればあなたの身体は健康そのものになりますもし旅の道中蛇の毒で麻痺したなんてことがあってもこの薬があれば安心ですさあ気になるお値段は何と今ならたったの300万ゴールドなんと300万ゴールドですはい買った買ったグゥ~
このありえない寝言を喋ってる奴に白羽の矢が立った……と。

夢の中での商売はさぞかし繁盛してるだろうな

う~ん……誰も買わない……
夢の中だろうと無理のある値段設定だったか
……まあ、そういうことだ。

私はそいつが嫌いだが、実力はまあ、低くはない。

仮に攻略出来ずとも、生還して情報を提供してくれれば万々歳だ

俺たちだけでどうにか出来なくても大丈夫なんですね
もちろんだ。これが君たちだけで解決しなければいけない事ではない。

危険だと感じたらすぐ引き揚げてきてほしい

分かりました
それと、ここに副都から遺跡周辺までの地図がある。

これまでの調査団が通ったと思われる経路や状況なども記入済みだ。

うまく使ってくれ

ありがとうございます
それで、応援は必要か? 2人だけでは厳しいと言うなら……
(ガバッ)いらん
うおっびっくりした
必要ないのか
ウチとカイカだけで十分や。ウチらだけで突っ込んでくるわ。

ウチが守ってカイカが攻める。最強のタッグやで。なっカイカ!

いや、最強と言うには俺が弱すぎるだろ。さすがに
2人で行くというのなら止めないが、大した自信だな
ふん。どうせヨミヨミも無駄に人をつぎ込みたくないんやろ。

ええやん。人が増えたら報酬も減るっちゅーねん

結局金かい
そう。それよりも報酬や報酬! いくら出すねんおお~ん?
この生き生きとした表情である
いくら欲しいんだ
まあ億とかの話になってくるよね
払えるか
ふっかけすぎだろ
払えないんですか~それでは困りますな~

ウチの魔法ともなれば億がかかってくるのは当然ですからな~

ならば、金の代わりに他のもので代替するというのは
例えば
アネア・エアクオウ――

奴にギルドの研究室を使う権限を与えるというのはどうだ。

魔法研究を生きがいとしている奴なら喜ぶはずだ

ん~ダメダメ。師匠が喜ぶんやったらウチもええけどな。

師匠はもうギルドの研究室にある設備程度じゃ喜ばんよ

……国内でもトップクラスの研究室だぞ
師匠ハウスの設備は世界トップや。

ギルドの研究室を確認せんでも分かる。師匠のが上

師匠ハウスすげえ
……では何が欲しい
天高くそびえる現ナマ
しつこすぎる現金プッシュ
……
……
……
2人合わせて……3億
マジで億が出たよ!?
少ない! もう1億!
そんな「もう一声!」みたいなノリで!!?
たった2人にそこまで出せるか! 3億でも十分だろう!
アホか! 命かかってんねんぞ!

ベテランが何人もやられてる危険地帯に行くんやから当然や!

そもそもウチの魔法自体がすごい価値や。安すぎるくらいや

……なら、3億5千万だ
まだいけるやろ! イッキ! イッキ!
酒の席かここは
これは個人の金じゃない。ギルド全体の資金から出るんだ。

安易に高額を支払ってはギルド全体の崩壊につながる

は? 知らんわ
お手本のような一蹴
ウチらは命かけてギルドのために遺跡を調査する。

ギルドは名声を守るためにウチらに金を払う。

十分4億出るやろ! 決めろ! ヨミヨミ!

……
……
……
……分かった……2人合わせて4億出す
よし。受けたろ
マ、マジで4億出すのか……
ただし。それは遺跡の問題を完全に2人だけで解決した場合だ。

そうでない場合は報酬を少なくする。

有用な情報を持ってこない限りは数十万で終わると思え

ふふん。そもそもウチが行くってだけですごい価値があんねんけど、

まあそれくらいはええやろ。どうせ満額で貰うけどな

というか、生きて帰っただけで数十万貰えるんだ
……契約書を用意する。少し待て
ええよ
はい
……
どしたん、腹の痛そうな顔して
腹が痛いんじゃない、頭が痛いんだ
でしょうね……
危険な遺跡を調査してくる代わりに、えげつない高額をふんだくった山田。

果たしてどんな試練が2人を待ち受けているのだろうか。何もない可能性もある。

次回、いよいよ第二章の旅が始まるらしい。お楽しみに!

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色