ドカベン魔法使いとの金汚い冒険

第5話「ドカベンが野球をやめてアイドルになった件やけど……」

エピソードの総文字数=3,139文字

暗殺者……って、どういう、意味だよ……?

え、それは……本気で言ってるのか?

ふふん。ウチらにごちそうしてくれたし、

とても人を殺すようには見えんかったって?

そう、そうだよ
その上あんなに美人で、か弱そうな人が。

まさか暗殺者なわけないやろと?

うん……
――せやから「暗殺」者なんやろうが。バレへんから適任やねん
……!……いや、でも
暗殺者っていう確実な証拠がないって言いたいんやろ?
そう。そうだよ。

怪しい素振りは一切なかったし、武器を持ってる様子もなかった。

それに俺たちを捕まえるだけなら門のトコで捕まえれば済む

せやなあ。完璧なまでにただの娘さんやったなあ。

殺すつもりやったら不意打ちかければええ話やし

うん。俺たちの事を知るために近づいたのかもしれないけど、

そもそも俺たちから首を突っ込んでいったんだぜ?

そこやな。それが全てや
そこ? 俺たちから首を突っ込んでいった……
……
えっ、もしかして……単純にお前が知ってただけ??
あったりー!! 証拠以前に、ウチがやっこさんを知っとるんや。

これ以上ない根拠やろ?

な、なんだそれ……。じゃあなんでお前がハイロさんを知ってるのに、

向こうはお前のことを知らないんだ?

ウチが一方的に顔と名前を知る機会があっただけや。

前はギルドに顔出したりもしとったし

じゃあギルドにコネとかあるのか?
その辺も含めて、今後の計画を話すわ。

とりあえずそこの服屋の中で話そうや

分かった
あっもちろん買ってくれるんやんな??
買 わ な い
チッ、ケチやな~









色々あるなあ
こっちはリーズナブルでお財布に優しいな
おっこれは……うーん高い
カイカこれとかどない? でも色が微妙やな~
いいから早く話せよ
なんやカイカ、

女の子が服選んでるのに何の感想も言われへんのん?

あーはいはい。かわいいかわいい
褒め方が甘い! そんな褒め方やったら女の子は喜ばんで?

これやからモテへん男は~

余計なお世話だっつーの
よーしよしよしよし! よく出来たぁ! いー子だ!!

よーしよしよしよしよしよし!! てな具合で

その言い方だとお前、女の子じゃなくて犬か何かだよ?

あと店の商品で遊ぶな。メガネは置いておきなさい

で、話を戻そか。

ドカベンが野球をやめてアイドルになった件やけど……

そんな話はなかったし、そんな話はしてなかった
「きさまら二度とアイドルができんようにしてやる!!」
ドカベンの名言を面白おかしくするな。

それを言われたアイドルは何をしたらそこまで言われるんだ

……これからについての話やったな。

目的から先に言うと、これからウチらはギルドのリーダーに会いに行く

本当に会いに行くのか? 相手はお前を捕まえようとしてるんだよ?
安心しぃ。あいつはウチを捕まえたがってるけど、

ウチが持ってるレアな魔導書を渡せば水に流すはずや

本当か?
その価値はある。でもあいつは内密でこの本を手に入れたいはずや。

せやからウチが直接渡しに行かなあかん

それで、ハイロさんにリーダーの居所を聞いてたのか?
そう。リーダーの確実な居所なんて一部の人間しか知らんねんけど、

お涙頂戴のエピソードであっさり教えてくれたな。

冒険者から聞いたってのは嘘やろね

人の良心につけ込んでなんてことを
ホンマは居所の目星がついてなくって

とりあえず首都に行くつもりやってんけどな。

身内のお偉いさんから確実な情報が聞けてよかったわ

その情報が狙いで、不良に絡まれてたハイロさんを助けたのか?
そういうことや。向こうはこっちの顔なんか知らんし。

たぶん普段は酒場の娘として暗殺者の身分を隠してるんやろうな?


暗殺者ってバレてるとは知らずに、悪意なさそうやしええかって思って

ウチらのために機密情報を教えてくれたわけや

なるほど。とりあえず疑問は全部解決したよ。

向こうが警戒してなかったから暗殺者らしい素振りがなかったわけか。

単純に一人の人間として俺たちに同情したから情報を流してくれた

自分が騙す側やと思ってるから、まさか騙されてるとは思いもよらん。

そこを狙っただけ

お前って12歳らしくないよな、本当。

……ところで、ギルドのリーダーとはどういう関係なんだ?

まあ色々あってな。

ほら、さっきお涙頂戴の作り話したやろ? 母が病にうんぬんっての

あったな
あれ、立場逆やねん。ウチが薬を調合したったんやで
お前が治す側かよ
あったりまえやん! ウチが治せんモンをヨミドに治せるかい!

そもそもウチのオカン、ウチを産んだ時に死んだしな! あっはっは!

お、重てーよ……。全然笑えねーよそれ
ま、そういうことや。ウチらはヨミドに会うために副都まで行く。

だいたい一、ニ週間くらいで着くかな?

ルートや天候にもよると思うけど、まあだいたいそんなモンか
よし、じゃあ買うモン買って、とっとと行こうやないの!
おう!
……って、お前はともかく俺も追われてるのか?
あの場におったんやし、なんか情報持ってるの確定やん。

ウチほどは警戒されてないやろうけど、追われてると思うで?

くっ、結局お前についていくしかないのか
ええやんええやん! こんな美少女にお供できる機会めったにないで?
はいはい
むむむ……あっさり流されるほどつまらん事ってないわ
あのさ
ん?
ハイロさんもギルドの偉い人なんだろ?

当然俺らの情報が耳に入ると思うんだけど

まあいずれ耳にするやろうな
そうなったらハイロさんは俺らを追ってくるよな?

しかも行き先もバレてるし追いつかれるんじゃ?

せやなぁ……? まあなんとかなるんちゃう?

ところでこの服どないよ?

服買ってる場合じゃねぇよ!?

さっさと行くぞ!!

まあ追いつかれたら追いつかれた時よ。

その時は紺屋の地震って言うわ

こうやの……地震? どういう事だよ?
紺屋ってのは染物屋よ
へぇ……
地震が来ると染料が揺れてえらいことや
まあそうだね
すると、澄んだ色の藍色が濁ってまう……
藍色が濁ると?
藍澄まん(相済まん)
謝って済むかー!!
あっ! あの服値段もお手頃ちゃう? あははは!
聞けーーー!!!






―夜―



コンコン

ん? お父さんっすか?
そうだ、入っていいか?
開いてるっすよ~!


ガチャッ


バタン


どうしたんっすか? こんな夜更けに
――人払いはしました。定時報告です
……
――
――定時報告が遅いのではないか?

何をグズグズしていた

申し訳ありません。表の仕事がなかなか終わらず
定時報告は重要な情報伝達の場だ。

十分な時間を取れるよう、時間管理を徹底するよう言ったはず

はい……
役目ゆえ表の仕事が忙しいのは分かるが、次から気をつけるように。

ささいなミスがギルドの瓦解につながる可能性もある。

特に我々はギルドの機密を扱う立場なのだからな

肝に銘じておきます
それで、副都方面の問題はどうなっている?
はっ。問題解決に向けて取り組み始めたばかりですのでまだなんとも。

しかしヨミド様がおりますゆえ、いずれ解決するかと

そうか……
それと、この付近で手配情報が出ております
手配?
はい。監視対象だった道具屋の店主が行方をくらませたそうです
なにか手がかりは?
はっ。名前は山田太郎、魔法使いの少女です
――魔法使いの少女?
ええ。青い髪の長髪で、大きな魔法帽を被っているとか。

詳しくは知りませんが特徴的な話し方をするそうです。

ヨミド様が直々に「必ず生け捕りにするように」と

……
ふぅん……
……






……や、やっちゃったっす……。たはは……)
(どう考えてもマサミさんのことっすよ……。うかつだったっす。

 これはすぐに追いかけるべきっすね……。

 ……ああ~~ヨミドさんに怒られるっす~~!!

(え、何で笑ってるんだ? 報告中に表情崩すの初めて見た……)


がっつりやらかしてしまったハイロは、既に街を出た山田一行を追うことにした。

山田たちは無事副都までたどり着けるのか! それともその前に捕まってしまうのか!

次回、そろそろ戦闘があるはず。

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