第26話「いや~ウチってオトコを虜にしてまう罪なオ・ン・ナ♪」

文字数 2,279文字

……というわけで、ここに来たんや。

大体いきさつは分かりはりました?

いや、まるで分からない
前回ラストの「話が進むようになった」って説明文は何やってん
ふふ。冗談だよ。全て理解した
冗談かい。全然区別できへんからホンマにやめてほしいわ
それで私に何をしてほしいのかな
うん。遺跡を攻略するために師匠についてきてほしいんや。

もちろん師匠が忙しいのは分かっ

いいよ、別に
……何の躊躇もなく、かつ食い気味なお返事ありがとう
どういたしまして
ほんまに大丈夫なん? 色々研究とか残ってるんちゃいますのん
魔力を操作する魔法なんてめったに聞かない。興味がある。

弟子が持ってきた還元……?……ああ、案件となればなおさらね

おっと。そこら辺のトコで1つハッキリさせなアカンことが
なにかな
ウチはもう独り立ちした身なワケやん?
そうだね
せやから、「師匠やねんからタダで助けて~」とは言わん。

ちゃんと報酬を払いたいのよ

私からすれば話を持ってきたことが報酬みたいなものだけど
それやとウチが納得いかん。

お互いに納得できる条件で話をつけたいってのが商売人根性や

そうかい
たとえ相手が師匠でもそこは揺るがされへん。

いや、師匠やから余計にかな。親しき仲にも礼儀ありってトコや

うん
こいつ、カイカともその辺はしっかりさせとる。

カイカの戦闘をウチが助けるっていう契約や。な?

ほとんど何もしてないけどな、お前
ほら、カイカもウチがおって助かるって言うとる
言ってねえよ。耳鼻科寄ってこいテメー
ふふ。悪いね。他人への作法は何も教えてないんだ
ああいえいえ、もう慣れたんで
……そういうわけで、どんな報酬が欲しいか決めてえな。

ウチは何億積めって言われても驚かんよ

そんなに金がいるのか
師匠が協力してくれるんやったらそれくらい当然やと思うで

お金よりも、今日泊まるなら晩御飯を作ってくれる方がうれしい

大金に晩御飯が勝つのおかしいやろ
ふふ。パンを焼いてくれる?

君がジャムを塗って、私がバターを塗る。彼はどっちが好きかな

いや、うん、まあ……それはええけども……さ
そうかい。君はどっちがいい
俺ですか? 俺は……バターかな?
ふふ。バター。バターね
いやバターとかジャムとかは…………置いといてやな。

もっとこう、デカいレベルの要求してもええんやで?

そうなのかい。じゃあ、その辺の掃除をお願いしようかな
ああ、うん……ええんですけど
ホコリがたまって仕方がないからね
いや、もっとさ。スケールの大きいのは?
ん。じゃあ書架の整理でも
ちっちゃい!! スケールが!!!

もっと大金と釣り合うレベルの要求してきてや!

ふふ。この話はね、1つ問題がある
へっ?
そもそも私は、現在の貨幣価値を知らないんだよ。

買い物しないから

そっ……そっからかぁ~~~~~~!!!
そんなことってあり得るのか?
だから何億もの大金と同等の報酬、なんて言われても分からないよ
……でも、現金で渡す訳にもあきませんよね?
そうだね。買い物しないんだから現金を貰ったところで意味はない
んんんん~~~~、じゃあとにかく今1番欲しいものとか。

1番やってほしい事とか……そんなんあります?

ん…………
…………
…………
…………ああ、じゃあこういうのは
ありました? なんか
この前、一段落ついたら戻ってきてほしいと言ったろう。

あれは魔法の研究を手伝ってほしいからなんだけど

ああ、さいで
あれは数週間ほど手伝ってくれれば良かったんだけど
けど?
欲を言えば7-8年ほど手伝ってほしいなあと
(しちはちねん)
(こいつ、驚きすぎてセリフが声になってねえ)
無理な相談と言うなら強制はしない。理想はその年数というだけ
いやっ……いやいや。そんな事あらへんで師匠!

師匠が協力してくれるんやったらそれくらい安いモンやわ

そうかな
せやせや。んで研究の手伝いっちゅーんは早いほうがええやろ?
そうだね
せやったら、カイカとの先約を優先して遺跡を攻略したら、

その後に手伝い始めることにしようや。それでええやろ?

異議はない
カイカもそれでいい?
まあ、いいんじゃないか。俺に止める理由はないよ
よし! じゃあ遺跡を攻略したあとウチが師匠の手伝いの流れで!

いやーカイカすまんな?

ん? 何が?
ウチの天才的な頭脳と魔法なしで今後旅すんの厳しいやろ?

もうカイカはウチの助け無しでは生きていかれへんくらいちゃう?

いや~ウチってオトコを虜にしてまう罪なオ・ン・ナ♪

ハンッ
いま鼻で笑たやろお前!! 表出ろ!!
笑ってねーよ
じゃあ何やねん今のは! 「ハンッ」て言うたで「ハンッ」て!
バカにしたんだよ
一緒や! どっちも!
知らん知らん
だいたいな、ウチ分かってんねんで?
なにが
カイカってさ、美人が近くにおる時だけコミュ障になるやろ。

暗殺者のお姉ちゃんの時と、今回の師匠の時! それ以外はセーフ!

なっ……いや、まあそうかもしんねーけど。それの何が悪いんだよ
お前アレや! 女の人とお付き合いした事ないからビビってんのやろ!

美人の前でお利口ぶって! それともむっつりスケベか!?

お利口ぶってはないし、人をスケベ呼ばわりするな
んでもって、その条件でウチと話す時は大丈夫ってどういうことや!

ウチは美人ちゃうってか!? おーん!?

お前は女とも子供とも思っちゃいねーよ!
今それ言われても嬉しないわボケー! しばくでホンマ!!
2人は仲が良いんだね。ふふ
どこが!?
そういうとこかな
綺麗にハモった2人だった。その後カイカが引き下がることで場が収まったらしいが、

今回の冒頭のようなパターンもあるので次話でも引き続きケンカしてる可能性大。

師匠も付いていくことが決まったが、その前に色々準備するらしい。次回お楽しみに!

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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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