第32話「へー、あんま興味ないけど……」

文字数 2,813文字

~前回までのあらすじ~

不意打ち魔物ヤローを倒し、MP低下魔法を使うやっかいな魔物も捕獲。

師匠による得体の知れない魔法で、その魔物を洗脳化に置いたのが前回まで。

敵の目的とは何なのか? 敵勢力の全貌とは?


というのを今回の前半で聞き出しますが、そのまとめを途中で上手いことやられてしまったので、そこまで読み飛ばしてもいい(赤字参照)と思います。

……つまり、アンタら2人以外にもまだ仲間がおるんやな?

しかも20匹以上が遺跡に

そう……我々は……王の名のもとに勢力拡大を目論んでいる……

なるほど。リーダーがおるってことは魔物の組織なんやな。

……師匠、こいつの某戦場カメラマンみたいな話し方どうにかならん?

脳を操作して無理に答えさせてるんだから、そうなっても仕方ないよ。

情報が得られれば良いんじゃないのかい?

んまあ、まあせやけどさ……やりづらいなぁ~。

で、王ってのはどういう奴なんや

王は……偉大な力を持つお方……

私の魔法は王から賜ったものにすぎない……

アンタよりすごいって事なん?
その通り……あの方は全ての魔物の王として相応しい……
へー、あんま興味ないけど……
いずれにしても、ただ者じゃなさそうだな
勢力を拡大したい、とか言うてたけどそれは何でなん?
決まっている……それは王を王たらしめんとするため……

100年前に果たせなかった覇業を再び遂げる時が来たのだ……

100年前? どういうこと?
我々は100年前も同じことをしたが……人間の抵抗により断念した……

王はこの失敗を教訓とし……100年後やり直すこととしたのだ……

ふーん……100年前ってさ、師匠生きとったよな?
たぶんね
コイツこんなん言うてるけど、100年前こんな感じの事ありました?
どうやってここまで来たのかすらもう忘れたのに、

100年前の事なんかいちいち覚えてないよ

うん。やんな。一応聞いてみただけやで……。

ちなみに言うとくけど、ウチら師匠が飛ばしてここまで来たんやで?

そういえばそうだったような
2週間かかるとこを30分で来たってのも忘れてたっぽいな……
まあね。ふふ
……で、100年後やり直す事にしたって事は、

100年間封印でもされとったわけ?

その通り……王の魔法により……私と王が100年間封印された……

100年の時を経ることで状況が変わるのを待ったのだ……

ああ、ホンマに封印されとったんや。でも自分でやったんやね。

20匹以上仲間がおるって言うとったけど、その仲間はどっから?

その者たちは……私が兵士として勧誘した……

国造りには兵力が欠かせない……

ふんふん。で最後やけど、ココらへんに来た人を襲うのは何でなん?
危険分子は排除するのが私の役目……遺跡に近づいた者は排除……
なるほどね。つまり……

「100年前、魔物の王になろうとしたけど失敗」

「せやから現状を諦めて、100年後やり直すことにして、最近復活」

「今は国造りのため、再び兵士を集めてる。近寄る人間は撃退する」

ってトコやね

人類的には割と一大事だな、これ
やね。魔物が組織的に活動して人間を襲うっちゅーのは普通に危ない。

これは、こいつらを一掃してようやくミッション完了っぽいわ

そうだな
よし、もうちょい色々聞いてみるわ。

2人ともちょい待っといてや~



~間~



ふむふむ……まあだいたいこんなもんかな?
……終わった?
……
終わったで。こんだけ色々聞き出しとけば万全やろ
そうか……
……
……どしたん? 2人とも元気ないやん
いや……お前、2時間くらいぶっ通しで喋ってたよ?
あ、そんなに長い間やっとった?

ごめんごめん暇やったよね

俺と師匠さん、もう全然ついて行けてないよ
立つの疲れたよ
ごめんて~
それで、この先どうするかは決めた?
うん。王の一味とやらを全員シバきに行きますわ。

聞いた感じ、余裕でミッションコンプリート出来るかな~って

そう。なら何ら問題はないわけだ
せやな。もうよゆーよゆー
じゃあ、私この魔物2匹を連れて先に帰るね
…………へっ……?
それだけ余裕があれば私がいなくても大丈夫だよね。

私この2匹に興味があるから、先に帰っていろいろ調べてみたいんだ

い、いや……それは困る……
なぜそう思う
余裕ってのは師匠ありきの余裕であってですね。

師匠がおらんと……万が一ってことが……

1万分の1くらい、大丈夫だよ。君たちなら
いや……あ……その……
何?
計算が狂うっていうか……勝ちを確実にしたいんですわ……
私がいないと確実に勝つ自信がないの?
う、うん……確実や……確実やないっていう意味では仰る通り……
なぜ確実じゃないのかな
そら……聞いた限りやと敵は手強いんや。

王とやらはヨミド……ギルドのリーダーとええ勝負しそうな魔法使い。

兵士とやらも、そこそこ高レベルなんが集まっとる

うん
でや。まあ、これをカイカ1人で全員倒すのはさすがに無理やと思う。

悪いなカイカ、こんなん言うて……

いや、大丈夫……
ここにウチが加わったら……せやな、%で言うたら、

勝率80%くらいはあると思うけど

十分じゃない?
ちゃいます。これはあくまで「勝つ」確率。

思わぬケガとかするかもしれんし、想定外の事が起きるかも

そう
それにさ、ウチはMPが少ないでしょ? 魔力の割に。

やから師匠さえいてくれたら、もしMPが切れても大丈夫やん

ふうん。あのね
はい……
そういう安全策を思いつけて実行できてしまうから、

MPが少ないって分かってるよね

――……
……?
理論で固めるのが悪いわけじゃないけど、それがMPに反映されてるね。

たまには計算を狂わされた上で、壁に当たった方が良いと思うよ

いや、師匠の言うことも分かりますけど。

それはそんな重要やないっていうか……

そうは思わないよ
いや、そうかもしれんけど、さ……あの、師匠アレや!

いくら師匠とはいえ報酬を払うワケやし、最後まで仕事してもら……

2週間かかる行程に対して30分でここに連れてきたのも、

2匹をこうして捕まえたのも、脳を操作して情報を引き出させたのも。

全部私がやったことだと思うけど。不十分なの?

……いや……
それに、君は自称するまでもなく天才なんだからさ。

その脳に追いついてないのは、信じることだけだよ……

いやでも、ウチは天才なんかと……
、それをやめてほしいって言ってるんだよ
っ……ごめんなさい……
……
――じゃあ、この……
うーん……
ブツブツ……ブツブツ……
……2匹を連れて帰るね。

2匹とも早めにどうにかしないと、どうにかなっちゃうだろうし

了解……
分かりました
じゃあね



▼師匠は2匹を連れて飛び立って行った。





……はー
……
……
……
……
……座り込
うあ~~~っ……
……
……ごめん、なに?
……座り込ん……でた所悪いけどさ。

どういう理由で師匠さんが帰っちゃったのか、説明してくれよ

うん……分かってるよ。ちゃんと説明すんで……
おう
……
……
は~あ……
どうしたんだよ、本当に……
急に戦線離脱してしまった師匠。

何やら山田の言動に原因があるようだが、詳しいことはわからない。

次回、引き続き説明回。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色