第6話「他人に「お前ってどれくらいお芋なの?」って聞くヤツいるか?」

文字数 2,312文字

前回、ギルドのリーダーに会うことを決めた2人。

そのための情報も手に入れ、リーダーのいる副都へと向かうことになった。

2人は副都までの山を通ることにし、汗水流して登っていた。

……
……
……
……
……カイカ
……何だよ?
おんぶして♪
汗水流せよ。まだ登り始めてから3分も経ってないよ
いややーもう疲れたー!

ええやんそんなでっかい剣持ってんねんから今更変わらんやろ!

いや、さすがに剣よりは人間の方が重いよ。お前どれくらい重いんだ?
おいも……?
「おいも」じゃねーよ。どれくらい「おもい」か聞いてんだよ。

他人に「お前ってどれくらいお芋なの?」って聞くヤツいるか?

芋好きか? 俺は

ウソウソ。高3の時点では85kgらしいで
それはドカベンの体重だろうが。せいぜいその半分だろお前
せやな! でも四捨五入したら100kgやからドカベンにも負けんよ

40kg台なら四捨五入すると0だかんな?

2の位で四捨五入したら世の中の大半が100kgだし。

計算がザルすぎる上にドカベンと張り合う意味も分かんない

なんでもええからおんぶして~~~
やだよ。自分の魔法で飛べばいいんじゃないの?
MP回復する薬って高いんよ。こんなとこで使いたないわ。

ウチのMPってそんなに多くないし長持ちもせん

へえ、MPはそんなに多くないのか
だからおんぶ~~! ハリアップハリアップ!
やだって。そもそも山ルートを選んだのはお前だろ?
せやなぁ。こっちのが近道や
自分で選んだルートならこうなるのは分かってるだろ?
分かっとったよ
だったら、疲れる対策も自分で考える。

仲間に負担させない。ってのが普通じゃないか?

それとこれとは話が別~~~!
子供かよ
子供や
あっそう……いや、とにかくやだよ俺
かーっ! ケチやなあ!

女を持たれへんヤツが女からモテるわけないやろ!

放っとけ。いいんだよしばらくは旅するんだから。

女子供引き連れても邪魔なだけだよ

現状、「女」「子供」両方満たしてるウチを連れてるけど?
お前は女とも子供とも思っちゃいないよ
じゃあペットかな? わんわん!
飼い主におんぶしろとねだる犬はいねーよ。お前は猫だ
猫か。にゃーにゃー! ご主人さま、早く我が血肉となるにゃー!
たぶん虎だ、それ
にしても、なんかそういう話は今まで無かったん?

ないゆーても多少何かしらあったやろ

いやー、ないな。気づいたらずっと剣を振ってた気がする
そうなん?

そもそも俺の村は人が少なかったし、同世代の女の子がいなかった。

付き合うどころか、そもそも恋もしなかったなあ

おいも……?
「おいも」じゃなくて「こいも」だっつーの。

なんだ腹減ってんのか? お前

まあ出会いがなかったわけやな。

でも旅していく中で好きな人ができたらどうすんのん?

いやー、できるかなぁー……
そういう事もあるかもしらんでー
まあそういう時は積極的になれたらいいなって思ってるよ。

思いは伝えないと分からないもんだしね

おいも……?
「おいも」じゃなくて「おもい」だっつってんだろうが!

なんだ芋食べたいのか! 金やるから買ってこい!

よっしゃ!! ありがとうカイカ!!
あっクソ! これ後で支払い請求がくるやつだ!?

罠にハメたなこいつ!

約束は守りや? これで宿代の分と合わせて2つめやな。

いや~感謝感謝やでえ~

宿代のも忘れてねーのかよ!

引っ掛けておいてなにが感謝感謝だこいつめ

あっ、甘藷甘藷?
「かんしょ」じゃねーよ「かんしゃ」だよ!

誰がさつまいもを旧名で言えつった!

まあそういうわけでよろしくな! 楽しみ~
はぁ……もういいよ芋くらい。そんなことよりさ
ん?
ギルドのリーダーに渡すレアな魔導書って

どんなことが書いてあるんだ? 禁術とか、そういうの?

そら、決まっとるやろ
あ、やっぱりそういうのか
おいもを無限に生み出す禁術……
もういいよ芋プッシュは。忘れたりしないから安心しろ。

いい加減このくだりも飽きてきたよ

せやな。芋といえばやっぱりが食べごろやね
飽きてきた」っつってんだよ。別のパターンを織り交ぜてくるな
飽きてきたって言うからパターン変えたのになんやその反応は!

ウチはどうすればええねん!

そもそも何かしろと頼んだ覚えはない
……ま、実を言うとこの魔導書は強烈な魔法ばっかでな。

コレを戦争なんかで使われたら、死人がごそっと増えるんちゃうか

そこまでか。そんなのをギルドのリーダーに渡してしまっていいのか?
そんな重要書物を、民間人のウチが持ってるのも大概どうかと思うで?
まぁそうだけどさ……自分で言う? それ
まー言いたいことは分かる。権力を持った人間にそんなん渡したら

戦争の道具に使われるんちゃうかって話やろ?

そうだね
まあな、その辺は大丈夫や。安心してええで
本当に?
ウチに考えがあるからな。うまいこと切り抜ける作戦が
そうか、ならいいけど
どうせウチが「戦争になったら薬の需要が増える! 大儲けや!」とか言い出すんちゃうかって思っとったんやろ?
うん
そ、そこは否定してほしかったわ……
まあ自分たちが原因で人が死んだら誰も良い気はしないと思うよ。

何か対策を考えてるならお前に任せる

うん、ウチに任しとき。その辺は上手いことやって……



ガサガサ……



 
ブオオオ……
 
魔物か……
えげつないビジュアルのやつが来たな。いけそう?
あのタイプは毒に気をつければ大丈夫だと思う。

火魔法が効きそうだけど、周り木ばっかだから延焼に気をつけろ

ほいほい
よし、じゃあとっとと片付けるか
カイカ!
どうした?
おんぶして♪
この状況でっっ!!?!?!??!?
数分後、そこには「マラソンランナーの水補給・最短バージョン」と言いながら薬を両手に持ってカイカにおんぶされる山田と、その山田をおんぶしながら敵と戦うカイカの姿があったという。次回、多分戦わない。
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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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