第3話「3ヶ月客がこなかったのにまだ商売をしようという根性がすごい」

文字数 2,407文字

森を抜けて街に入ろうとするも、門が閉まってて野宿を強いられた2人。

翌朝には門が開き、門番の視線に冷や汗をかきながらも街に入ったのだった。

門番が何も言わんかったってことは、

まだウチらは指名手配されてなさそうやな。

この街はギルドの支部もないし、何日かは安全に過ごせそうやわ

だとしても、必要な物を買ったら

さっさと街から離れたほうがいいだろうね

んー? そんな怖がる必要ないやろ
いや、なんでそんなに悠長なんだ……。

というかこのままだと一生ギルドに追われる身だろ?

どうにかして和解する方法とか考えてないのか?

面倒くさいから、和解せずに破壊してまえばええねん
手配されて当然の危険人物だよお前は。2人で組織を潰せてたまるか
まあ壊滅に追い込むのは保留として
頼むからそこは「冗談として」の方向で進めてくれ。

巻き添えを喰うのは俺だ

ギルドをどうにかせなあかんのは確かやな~。

毎日のように襲撃されたらおちおち商売も出来んわ

3ヶ月客がこなかったのにまだ商売をしようという根性がすごい
当たり前やん! ウチから商売を抜いたら天才的頭脳と人望と

美貌とナイスバディと美麗なキューティクルとかわいい声と

天使のような笑顔と愛嬌のある会話術とあとそれから……

色々残ってんじゃん。しかもおこがましいな。

心配しなくてもその図々しさなら生きていけるよお前は。

……で、その天才的頭脳で解決策は閃いたの?

使えん味方を差し出して見逃してもらうなんてどうや?
良いアイデアだな!

お望み通り今からギルド員を呼んできてやるよ!

あははは! 冗談やってじょうだーん!
というかお前、森の戦闘で薬投げてただけじゃねーか!

使えないのはお前のほうだろ!

いや~、カイカ戦士やのに魔法も使えるから余裕やったもん。

さすが1人であの森に挑戦するだけあるわ

魔法も一通り練習したからな。本職には負けるけど。

回復さえあれば1人でも問題なかったとはいえ、

次戦闘中に寝てたら叩き起こす

美少女の寝顔が見れるだけで幸せやと思わんの? 贅沢やな~
ほざけ
ま、それはええとしてやな……。

ギルドの追手から逃れる解決法ならあんで

あるのか? 真面目なのなら聞かせてくれよ
ま、ま。まずは酒場に行こうや。腰を落ち着けて話したいし
まあ、まだ手配されてないなら酒場に行くくらい大丈夫か。

お前酒とか飲んだりしないよな?

飲まへんよ。飲んで金でもばら撒いたらシャレにならん
なら良かっ……ん?




あ、あの。困ります……
そう言わずにさぁ~。俺らと遊んでくれよ~?
そうそう。ちょっとお茶するだけだって!

俺らイケイケの冒険者だぜ~?

うぅ……




あーあーかわいそうに。

あのお姉さんうっとうしいのに絡まれよんな

あ、あぁ、そうだな……かわいそうだな
……!!……
――今や! 助けに行ったれー!!(ドンッ)
えッ!? うおあっ!!(ボスッ)
いてっ、なんだぁ? お前!
い、いやその、ええと……。

も、もめ、揉め事はやめたほうがいいと思います……

んだとぉ~? 俺らにケチつけようってのか!?
そそ、そんなつもりは
その辺でやめにしいや、アホども!
ああ!? 誰がアホだコラ!!
ちょ、なんで煽るん――
善良な一般人に迷惑をかけるとは冒険者の風上にも置けん奴や!

これ以上迷惑をかけるんやったら成敗すんで!!

お、おい! 良いのかよそんなこと言って!
……隣の男が!
俺に押し付けるなよっ!?
上等だコラ! お前らくらい俺1人で――
――いや、すみません! 俺らが悪かったっす!

もう迷惑かけないんで勘弁してください!

え? お、オイッ
ほら、お前も謝れって! すみませんっした!
なっ、クソッ……すみませんっした……
いや~、ウチらのオーラに恐れいったみたいやな!

……で、お姉さんどうする? このまま成敗したってもええで?

えっ……いや、もう平気です。大丈夫
という訳や、しゃーないけど見逃したろ! ホラさっさとどっか行き!
へへっ、あざーっす! オラ行くぞ!
……
いやー解決して何よりや! ええことすると気持ちがええな!
色々覚えとけよお前……




おい、なんであっさり手を引いたんだよ?

あんなの俺1人でも――

バカ!
(ガンッ)あいてっ!?
ちゃんと相手を見なかったのか?

緑髪の男、背中にごつい大剣背負ってただろうが

だからなんだよ?

デカい剣持ってる奴はみんな腕力がすごいってのか?

それだけじゃねぇよ。

デカい剣を持ってるってことは獲物がデカいってことだ。

あの装備から考えると、たぶん奴が狩るのはドラゴンクラスだな

えっ、ド、ドラゴン……
仲間が女1人だったのが気になるけど、どっちみち強いだろ。

逃げたほうがいいに決まってる

こ、こえー。とんでもない奴にケンカ売るところだったぜ




え、えーっと、その、えっと、ケガとかは……?
(ほんまにコミュ障やねんな、カイカ……)
ああ、大丈夫っす! おかげさまでどこもケガしてないっすよ~
え、あ、その、えーっと
あ、この話し方は気にしないで欲しいっす。

自分はもともとこういう話し方で

そ、そうなんですね……
そんなことより、危ないところを助けて頂き感謝っす。

知らない男の人に囲まれて怖かったっすよ。

お二人さえよければお礼がしたいっす! 食事でもどうっすか?

いや、俺たちは
いやー、せっかくの心遣いを無下にするのもかえって気が引けるわ!

ここはお言葉に甘えさせてもらお! お兄ちゃん!

え? お兄ちゃん?
なっ?
おいおい、人前では「お兄さん」って呼べっつったろ?

おてんばな妹だよまったく

あはは! 細かいこと気にしーなや、にーちゃん!
お二人は兄妹なんっすか?
せやで! お姉さんのお名前は?
自分、ハイロって言うっす! よろしくっす!

えーと、そこのお店でいいっすか?

うん、ええで!

いやー美人なお姉さんとお食事できるなんて嬉しいわ―!

おっさんみたいなこと言い出した
褒めすぎっすよー。面白い方々っすね!
かくして、3人は店のなかに入っていった。

いきなり山田がカイカを兄と言い出したりして、なんかある模様。

次回、たぶん飯食う。

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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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