第2話「「お金欲しい」って駄々をこねる子供やだよ俺」

文字数 2,110文字

さてと、荷造りはこんなもんかな。小屋を置いていくのはもったいないけど、まあ小屋までよう持っていかんわ
ああ、そうなんだ。大量の商品を風呂敷にぜんぶ詰めてるから、こいつ小屋まで持って行く気なんじゃないかと思ったよ
まぁ、木材を売るルートはまだ開拓してないからなあ。

売ろう思っても売れんわ

「まだ」っていずれツテを作るつもりの言い方だし、

売れるなら売る気なんだ。筋金入りの守銭奴だな

そんな褒めても何も出んって~。あっはっは
褒めてはない
んじゃ、準備もできたしぼちぼち行こか。時は金なりや
はいはい……ん? どこ行くんだ? そっちじゃないでしょ?
え? ダンジョンを攻略しに来たんやろ?
いやいや、ギルドの連中を倒しちゃった以上

そんな呑気な事やってる場合じゃないよ。いずれ追手が来るんでしょ?

いやいやいや……そんなに焦らんでもすぐには追ってこんて。スパッと攻略したら追手が来る前にこの森から抜けれるやろ
でも、さっさと逃げたほうがいいのは間違いないんじゃ?

攻略にこだわる理由なんかある?

理由ってそら、財宝やろ
やっぱカネ目当てじゃないか。お金にはそこまで困ってないし、

いったん追手を撒くのが先だよ

いやいやいや、何ゆーてんのん自分!?

財宝が目の前にあんのにみすみす置いていくとかありえんやろ!

自分それでも冒険者か!?

道具屋の店主なのに言ってることアクティブすぎでしょ。

いいじゃんゴタゴタが解決した後にまた来れば。

ここの財宝はそう簡単になくならないよ

なに悠長なことゆーてんねん! ここの財宝目当てで来る冒険者が

おるからその冒険者目当てに商売してたけど、商売せんようなったら

そらウチが全部独占するに決まってるやろ!

そういう行動をするからギルドに目をつけられるんだよ?

悪いけど財宝はお預け。ほら、さっさと森を抜けるよ

いーやーやー!! おーかーねーほーしーいー!!!
「お金欲しい」って駄々をこねる子供やだよ俺。

ふつう「お菓子欲しい」とかだろ

カイカが考えを変えるまでここを動かん!

自分も回復役がおらんと困るやん?

どや、これでウチに従うしかないやろ!

えぇ~……
さあカイカ決めるんや。ウチに従って富を手に入れるか、

逆らって野垂れ死ぬかの二択やよ!

うーん……分かった。じゃあこうしよう
ふっ、やっとウチに従う気になったんかいな。まあ賢い判断やと思うで? 森の奥深くにあるドラゴンの巣には危険なドラゴンがうようよおるけども、あそこは洞窟の至る場所に金が眠ってるんや。持ち帰るのは面倒やけどまあ魔法で何とかすれば
森の入口まで引きずって行く(ガシッ)
ぴゃぁーーーーーーー!!!

いーやーやー!! おーかーねぇー!!!(ズルズル)








つーん(←結局しぶしぶ従った)
……
つーん
……
つーん!!
「つーん」って口で言うもんじゃないよね? 態度で表すんだよ?

そんなに拗ねるなって

おたからほしかったな~、お~た~か~ら~っ
まだ言うか。山田はそんなにお金が大事なの?
ちゃうで
え、お金が大事って訳じゃないの?

もしかして別の深い理由があったり……?

ウチは山田ちゃう、岩鬼や
そっちが「違う」かよ。しかもまだ言ってんのかそれ。

某野球漫画の登場人物に固執する意味も分からないし。

……じゃあ、お金は大事なの?

……?
純真無垢な目で「えっ当たり前やろ……?」って訴えかけるのやめろ
お金は大事よ大事。そのお金を目の前で見逃すなんて惜しすぎるわ。

逃した魚は大きいなぁ~、はぁ~、お~し~い~わ~

分かったよもう……。

街についたら山田の宿代も払うから、それで気を直してくれよ

ほんまに? ええの?
まあ山田を無理矢理引っ張っていったのは俺だし……。

宿代くらい出すのが筋かなって。遠慮しなくていいよ

やったーありがとう! 宿代が浮いたわ!

いやーカイカ大好きやでほんま!!

立ち直り早すぎだろっ! 

最初からこうするために拗ねたフリしてただけなんじゃないの!?

やっぱ遠慮しろお前!!

もう約束したから「やっぱナシ」とかアカンよ?

商売人とした約束は守りや?

最初から罠のやつだコレ!! もうやだこの子!!

俺はお前なんか嫌いだよ!!

まあそう言いなや。約束したからには街までしっかり協力したる。

道は分かっとるよね?

ん、まあ一度来た道だしね。大丈夫だと思うよ
よしよし。ウチがしっかり支援するから壁役頼むで?

ほな行こかー!! 時は金なりや!

まったく、さっきまで拗ねてたくせに調子のいいやつだな。

よし、さっさと街まで行くか!



その後、そこそこベテランらしいカイカが前衛として切り込み、

自称「結構強い」魔法使いの山田が後衛として支援して、順調に進んだ。

そして追手に会うこともなく街の前まで無事にたどり着いた。



……
……
……街についたら俺が宿代出すって言ったよね?
ゆうとったな
……街には着いたけども、深夜に着いたのが運の尽きってことで。

街の門が閉まってるから、残念だが今日は野宿だな

野宿いやや~!! もぉ~~~っ!!!
門限までは思い通りにならなかった山田なのであった。

「もう魔法で門飛び越えてまおう! 行ける!」と主張したが、

「門番に見つかったら本格的に全国指名手配だぞ」と言われ諦めた模様。

次回、2人の身に休む間もなく何かが起こる? お楽しみに。

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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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