第12話「……なるほど。スーパーで卵が特売と」

文字数 2,440文字

~前回からのあらすじ~

寄り道を終え、一直線に副都へと向かっていたカイカと山田だった。

現在はその道中で越える予定の川、イスバ川付近まで来ているようである。

ようやく川が見えてきたな。あれは飛んで越えるんだっけ?
やね。でっかい川やから泳いでいくわけにもいかんもん
魔法を節約したがってた割に今回はあっさり魔法を使うんだな
普通は船に乗るとこやけど、追われてる身やから乗られへんかもやし。

船を作るっていう手もあったけど、沈没したら結局魔法使わなあかん

それもそうか。まあチャチャッと飛んでくれるなら楽でいいけど
誰が……徳川家康の妻やねん! うちはドカベンや!
「茶々」じゃねーよ。お前が茶々みたいとか一言も言ってないだろ。

だいたい茶々(淀殿)は家康の妻じゃなくて秀吉の妻だよ

あっそうか! うわーウチとしたことがやってもうた!
そんなにショックか?
あちゃ~、一瞬「なんやったっけ?」って思ってん!

確証がないんやったら言わんかったら良かった~、セリフが飛んだ~

ショック受けすぎだろ。そんなにネタが命か
カイカ、今度からウチのことはこう罵倒してくれてええで……
「空だけじゃなく、セリフも飛ぶ魔法使い」やって
うまいこと言ったつもりかそのしたり顔は!!

さてはここまで計算してわざと言い間違えたな!?

ソンナワケナイヤーン
カタカナになってんだよ! 声聞いただけで分かるわっ!

まったく、お前と話してたらこんなんばっかだな

HAHAHA! 言うてるうちに川のほとりに着いたで。

ヨドドノッと飛んでまおか~

聞いたことねえよそんな擬音。チャチャッでいいよもう
……ん?
? どうした?
なんか変な音聞こえへん? 水が激しく動いてるみたいな……
……そういえばそんな気も。でもここは川だよ。津波が起こるわけ



ザバァァーーーン!!!



!!
!? み、水ん中から……



……なんじゃ、2人か。少ないのう



龍……!






……(チャキッ)
……(グッ)
……おうおう、そう構えるな人間よ。

取って食おうと思って出てきたわけではない

本当に?
ああ。他に目的がなければとうに襲っている
襲う気ないん? じゃあ逃げていい?
それは取って食う
ひどい! 鬼!
龍だ
何か話でもあるのか? 手短に頼むぜ
まあそう慌てるな。お前たちはわしを狩りに来たのか?
? いや、違うよ
ほう、そうなのか?

てっきりまたエs……わしを狩りに来たギルドの連中かと思ったが

ウチらをエサ呼ばわりした! 誰がエサやねんこのタコ!
龍だ
てっきり、ってことは前にもギルドの奴らと戦ったことが?
ああ、どうもわしの首に賞金が懸かっているようでな。

何人も引き連れてきおったわ。まあ返り討ちにしてやったが

(賞金懸かるクラスのモンスターか。めんどっ……)
狩りに来たのでなければ都合がよい。

わしは人も食うが、食うものには困っておらん。

それより戯れに勝負したいと思っておるのだ。殺し合い以外の勝負をな

勝負?
ああ、当然受けるだろう?
それは詳しい内容を聞いてから決める
強気だな。反抗するならお前たちを食ってしまってもよいのだぞ?
反抗はしてない。それに俺らを食ったら勝負できなくなるのはお前だろ
くっくっく。それもそうだな。では詳しいことを話してやろう
(カイカ、龍相手に物怖じせんなあ。口挟まんでもいけそう)
わしは速さが自慢でな。同族の誰よりも速かった。

だが近頃は魔法とやらの発達でお前たち人間もすばしっこく動きおる。

そこで、わしとどちらが速いか競争をしようではないか

かけっこで勝負? 子供みたいやな
チビに子供みたいと言われてもな
誰がチビやねん! この伝説上の大陸!
龍d……ムーだ。それは
ルールは?
この場所から数km下流にある巨大な岩がゴールの目印だ。

わしは川を泳いで行くが、お前たちは陸地を走っていい

お前は川を泳ぐのか
ああ。だがわしは速すぎるから、

ハンデとしてお前たちは魔法を使ってもよい

大した自信だな
まあな。わしが勝ったら大人しく食われてもらうが、

お前たちが勝ったら望みを叶えてやろう

えっ! じゃあ5000兆ゴールd
わしが出来る範囲でな
チッッ
舌打ちの音がガチすぎる
で、どうするのだ。やるのかやらんのか?
(……やるのかやらんのかって、戦いを回避するルートが

「競争に勝つ」だけじゃねぇか。メチャクチャ言うなこいつ)

……ええやん。やろうや。勝ったら望みを叶えてくれるんやろ?

龍と戦って勝つより、かけっこに勝つ方がまだ可能性があるわ

やるのか?
ほほう。よいではないか。それでどちらが走るのだ
山田、お前が走れよ
なんでよ? こういうのは男の役目ちゃうのん?
150km/hで飛べるんだろお前
なんで前回の流れをここで持ち出してきおんねん。

あれはモノマネや。ええからカイカ走ってよ

しょうがないな、分かったよ
あ、それとやけどさカレーのライスじゃない方
それはルーだ。わしは龍
こいつの背中にウチが乗ってもええよね?
別に構わん
俺が構うわ! 何言ってんだお前は!!
ままま、カイカ。ちょっと耳貸しよ
ええ?
ゴニョゴニョ、ゴニョゴニョ……
ほう……
……ということや
……なるほど。スーパーで卵が特売と
言うてへんで? そんな事。

えっなに自分、今日ボケなん??

冗談だよ。分かった、それでいこうか
話は済んだか?
ええよ。カイカ、乗るからしゃがんでよ
ほいほい
よいしょっと。立ってもええよー
おう(スクッ)
うひょー! やっぱ高いなあ! 新世界やで!
おんぶではしゃぐな。子供かよ
子供や
あっそう……
準備はいいか? わしはとっくに準備できておるぞ
おっけーおっけー。下流のでっかい岩まで競争やんな?
そうだ。開始の合図だが、そうだな、そこの石を川に投げろ。

水面に落ちた瞬間から開始としよう

分かった。じゃあ投げるぜ(サッ)
せー……のっ!(ヒュンッ)
……
……
……
……あっ!! UFO!!
え?


――ポチャンッ


今だっっ!!(ダダッ)
なにっ!? しまった、出遅れたか!!
きたないさすが商人きたない。

果たして龍とかけっこをするというこの戦いの結末はどうなるのか!

次回こそまともな戦闘シーンがあるのか! お楽しみに!

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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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