第11話「山田太郎 二度寝しました!」
文字数 2,399文字
~前回からのあらすじ~
山田が師匠と再開したあと、
山田とカイカは先ほどの馬車じいさんを脅……協力してもらい街を脱出。
再び副都への道のりを歩き出したのだった。今はその道中。
手渡された弁当が暖かったから、「冷ましてくれ」と頼んだんだ
するとカイカは「なんで冷やすんだ。ホカホカの方が好きだろ」と言う
明らかにやり切ってから止めただろ。
だいたい弁当のくだり実際にやったことないし
脚色するその事実がまず存在しないだろって言ってんだよ。なんだお前元気だな、今日は気分がいいのか?
顔マネやりま~す! 「鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする人」
え、もしかして今日ずっとこのギャグを披露する流れ?
なんで受け止めへんねん! キャッチするとこやろ! 優しく!!
ウチは150km/hの速球や! 優しく飛べるかー!
150km/hの速球を優しく取れるかー!なんなんだよ今日のお前は、頼むからもうちょっと落ち着いてくれよ
ウチから落ち着きのなさを取ったら天才的頭脳と人望と
美貌とナイスバディと美麗なキューティクルとかわいい声と
天使のような笑顔と愛嬌のある会話術と気品のある風格と
愛らしい眼差しと上品な言葉遣いとあとそれから……
色々残ってんじゃん。しかもおこがましいな。前聞いたときよりバリエーション増えてるし
続きまして落語をご鑑賞いただきましょう。
演目は「金持ちの青田買い」
落語でその滑り出しもおかしい。……山田、ここから副都まで一直線なんだよな?
ん? そやなぁ。あんまし街にも寄られへんし一直線やね。
何なら途中の川も飛んで越えていくからホンマに一直線よ
待て待てぇいっ! そうだ、お前の生い立ちとか聞かせてくれよ
そう。そういえば俺、お前のことまだよく知らないなって思ってさ
ええで別に。隠すモンでもないし。そう、あれは今から5億年前……
宇宙の始まりでも語るつもりか? 真面目にやってくれ
まあホンマのことを話すと、12年前どこぞの貧困街で生まれたんや。
ウチを産んだ時にママ上はグエッと死んだ
重い話をざっくり話しすぎだろ。「グエッ」ってなんだ「グエッ」って
サクッと死んだら事故じゃなくて事件だろ。刺されてんだろその音
で、5歳のとき。
そん時に父親が口減らしやーゆうてウチをギルドに売り払ったんや
が、そこにウチの素質に前から目をつけてた師匠が乱入。
人身売買の現場に割り込み、ウチを拉致ったんや。
ギルドに売り払われるはずが師匠のもとで生活することになった訳よ。
まぁそっちの方が自由やからウチは喜んだくらいやけど
そうそう。んで5,6年修行して、天才的な頭脳の持ち主やったウチは
あっという間に師匠の技術を吸収し免許皆伝。一人前として巣立ち、
とりあえず金を稼ぎたいとあの森で商売しとったんよ
ギルドのリーダーとはどのタイミングで知り合ったんだ?
11歳の時。ヨミドのお母さんが死にかけてるゆーから、
ウチが薬を持っていったったんや。優しいやろ?
うん、あるよ。その時師匠はギルドに追われる身でな、ウチがヨミドのお母さんを助けた代わりに追うのを辞めさせたんや
裏あんのかよ。っつーか師弟揃ってギルドに追われるってお前。
ギルドと因縁深すぎだろ
10年くらい前、師匠はギルドの研究室で仕事してたんや。
その技術に感動したヨミドは師匠に弟子入りを申し込むんやけど、
師匠は手間やから嫌やって断ったんや
すると必死なヨミドは「弟子にしないと追放するぞ」と師匠を脅した。
でも師匠は先手必勝と言わんばかりに自分からスタコラサッサと逃走。
それ以降追われる身やったんよ。ウチが解決したけど
その話が本当ならギルドのリーダーはだいぶ……アレだな
まあこの話だけ聞いたらえらい小物やけど、実際そうでもない。
ただちょっと不遇なだけやねん
不遇やで。憧れやった人に弟子入りを一蹴されて、
自分は弟子になられへんかったのにウチみたいな少女が弟子になって、
しかも自分が治されへん病気をウチが治してまうねんから
うーん、それはギルドのリーダーとして精神的にくるものがあるな
師匠がヨミドの弟子入りを断ったときも、
「素質がない者を弟子にする気はない」って言うたらしいで
ギルドのリーダーなのに……それは怒る気持ちが分からんでもない
そう。大魔法使いとして崇められるギルドのリーダーが
実はこんな扱い受けてましたとかシャレにならんやろ。
別に言い触らしたりせんけど、ヨミドはウチと師匠のこと嫌いやろなぁ
悩みの多そうなギルドのリーダーなのだった。
次回、川に行ってついに戦闘……するといいなぁ。お楽しみに!
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