第28話「じゃあウチに祈ろう。エヴィバディセイ「天にまします我らの神よ」」

文字数 2,236文字

~前回までのあらすじ~

遺跡攻略に向け準備を始めた一行。

師匠ハウスで休むとともに、薬のストックを増やすべく作業中。



ガチャッ


帰ったぞ
クックック、見てしまったな。そうこれは全人類を破滅に導くための毒薬を作っているのだ! この毒薬は水分を汚染する作用があり、飲んだ者は体中の水分を汚染され数日で死に至る。これを川の上流から流すことで、毒が入っているとは知らず街の者は汚染水を飲んでしまうというわけだ! この毒薬の特効薬をつくるなど容易ではない。なぜならこの天才である私が作ったのだからな。つまり計画通りに事が運べば数ヶ月以内に全人類は破滅するであろう! フハハハハハ!
……
……
ジャムとバター、あった?
ありましたよ
シカトかっ!!?
あん? うるさいな誰だよお前
何ちゅう言い方や! うえへぇ~ん師匠ぉぉ~!

カイカのやつ、ウチをあしらうのが日に日に上手くなってく~!!

ほう。恥ずかしがり方にも良し悪しがあるのかい
師匠、恥じらうとちゃう! あしらうや!
あ、違う? ふふ
ちゃいますよ。恥ずかしがり方の良し悪して! 採点基準が知りたいわ
この人のボケは天然モノだな
……まぁええわ。カイカ、ちょっと晩御飯の支度しといて。

できあがったタイミングで呼んでくれたら下行くから

分かった
1分で作ってな
無茶言うな
1分で作ってね
えっ俺が少数派なのコレ!?
59、58……
す、すぐ作るけど無理だからな!? 絶対無理だからなー!!(ダッ)


バタン


ふっ、おもろ。罰ゲームでも考えとこかな
それより続きだ。早く終わらせよう
ん。ええけどはよ終わらせたいんですか?
大釜に材料を入れて混ぜてるだけだからね。あまり有意義じゃない
そーお? ウチは魔女っぽくて好きやけどな
私にそんな憧憬はないかな。これだけ終わらせて夕食としよう
ほーい
ところでひとつ聞きたいことがある
ん?
あの青年と知り合った経緯は聞いたけど。

君から見て彼はどういう人物なのかな

んー……? 見てご覧の通りちゃいます?
君から聞きたいんだよ。彼が信用に値する人間なのかどうかね
ううん。確かに会おたばっかやし、師匠はカイカの事よう知らんわな。

仲間として信用できるかってのは師匠の気になるポイントやと思うわ

そうだね
まあー、その……カイカはな
うん
えー、あー……
……
……アレや!
どれ?
あ~なんて言うたらええんやろ! 褒めたりたいんやけどさぁ……。

身内褒めるのんってなんか気持ち悪いわ!

……ほう。逆に悪いところは
けなすトコやったらいくらでもあんで?

ナヨナヨしてるし~、アホやし~、ウチのネタ聞いて笑わんし~、

ノリ悪いし~、すぐ怒るし~、ウチのネタ聞いて笑わんし~、

すぐ説教するし~、うるさいし~、ウチのネタ聞いて笑わんし~

内容が重複してるね
でも、実力はあると思うで? 実際ウチが助けられたこともあるし
君が危なかったことがあるのかい
そう。それが遺跡の近くで魔物に不意打ちくらった時のやつや。

魔力が弱なってるのに気ぃ取られてやられるトコやった

それを助けてもらった訳かい
そっ! そん時とっさにかばってくれたからケガせんで済んだんやで。

まあその流れで風呂敷は犠牲になったけども

その話を聞く限りでは、信用の置ける人物みたいだね
そうそう。ええやつやから信用したってな~






できたぞー。絶対1分以上かかってるけど
えらい遅かったやん。どしたん?
まず机の上のホコリを掃除する所から始まったんだよ
ああそーゆーことね。そいつぁご苦労!
なんで上から目線なんだ。さっさと降りてこい






お前がジャム付きのパンで
ういっす!
師匠さんがバター付きでしたね
そうだね
食事前に祈る神は?
いないよ
じゃあウチに祈ろう。エヴィバディセイ「天にまします我らの神よ」
さらっと神を騙るな。……じゃあそのままお召し上がりをってことで
ふーむ……むぐ……んーこの味懐かしいな
こうやって食卓を囲むのは……20年ぶりだっけ?
やから桁が1個ちゃいますて
ああ、200年ぶりか
そうかそっちに修正したか……
おや、200日だったかな
それはもう単位が違う……でも今までで1番近い
……えーと、質問いいかな?
ん。どしたん
遺跡にかかってる魔法についてお師匠さんから聞きたいんだよ。

お前「専門家に聞け」って言ってただろ

あーあーせやったな
なに?
えっとね。あの魔法の仕組みについて教えたって欲しいんですよ。

まだちゃんと説明してないから

私が?
ここはぜひ師匠から聞きたいんよ。お願いできます?
そう言うなら私から説明しよう。……名前は何だったかな?
カイカです
ああ。そう。……その……
まさか今の一瞬で忘れたんじゃないでしょうね
まさか
じゃあ言ってください、俺の名前
大麻君
そんなイリーガルな名前じゃないです。合法ですよ俺
ああ、合法君
そうじゃなくて
君が合法だと言ったのに
俺が悪いんですか?? 今の
そんなに責めたらアカンで師匠。泣いた君また泣いてまうやろ
お前は便乗すんな。泣いた君じゃねぇけど怒った君にはなるぞ
責めてはいないよ。スイカ君に事実を確認しただけだ
だんだん原型から離れていく流れだコレ
スイカやったら色は合ってるくない?
じゃあ緑色の髪した人全員スイカさんかよテメー
まあ、そんなことより話を進めようじゃないか。

遺跡にかかってる魔法の話だったね

いや、そんなことで済まされるのも困るんですけどね。そうですよ
じゃあ、説明するよ。メロン君
……もういいや
ついに訂正するのも投げたスイカ……カイカなのだった。

計算ボケと天然ボケに挟まれ、カイカは今まで以上に苦労しそう。

次回、たぶん真面目な話をするはず。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色