第31話「あー流行ってるよな~世界征服」

文字数 2,726文字

~前回までのあらすじ~

師匠を仲間に加え、1日かけて準備し、いよいよ出発の時が来た。

現在3人は、家を出たところでこの先の旅程を確認中。

遺跡攻略に向け、再び長い旅が始まる!

遺跡まで……だいたい200kmだったよね? 飛べば30分くらいかな
あらすじは台無しにするっていうルールでもあるんですか?
ちょ……っと待って? え、ウチら時速400km/hで飛ぶん?
そうなるね
いや、さすがにそれはちょっと……
無理があるんじゃ?
ダメかな? 魔力を温存した方が良いと思ったんだけど
温存して、それ??
ウチ、400km/hとか「とっておき」の域やねんけど……。

師匠、遅いんちゃうくて速すぎやねん。息できへんし身体が持たんわ

大丈夫だよ。上手く飛ばすから
いや、上手く言うてもやな……
行くよ(フワッ)
へ? ちょっ――(フワッ)
うおっ……!? ちょっちょっちょっ――(フワッ)


▼師匠は魔法を唱えた!

▼3人は高速で飛び立った!


わーーーーーーーーーーちょっと待ってアカン死ぬこれは絶対死ぬ高速で飛ぶことによる向かい風の影響で息苦しくなる高度次第では酸素不足が引き起こされ場合によっては呼吸困難に陥り……ん?
(いや……全然息苦しくない。俺らの周りだけ無風状態なのか?

 これだけ保護されてるなら地上にいるようなもんだな)

(なんやそういうことか。でもコレやと……)
カイカ―っ! 聞こえるかーっ!?
ん……なんか言ってるけど全然聞こえない(腕を交差させながら)
(さすがにウチらの間にある風が邪魔で聞こえんか。

 まあこれはしゃーないかな。30分景色でも楽しむか)

……
カイカ―っ! アホーっ!
さすがに「アホ」は口の動きで分かるぞ(中指を立てながら)
あっヤバいバレた! 無視しよ無視!



~約30分後~



着いたよ
うぅん、なんか吐きそう
大丈夫か? しっかりしろよ
いや景色見とって油断したわ。ちょっとカイカのマント受け皿にしても
いいわけねぇだろ。誰も咎めねーからその辺で吐いてこい
ええ? こんな美少女がその辺の草むらで吐くとか世界が許さんで
俺のマントならいいのかよ。世界理不尽すぎる
例えばその辺の草むらで美少女が息絶えると散々な末路っぽいけど、

殿方の胸元で息絶えたら悲劇は悲劇でもこっちのが感動的やろ?

むしろ選ばれたことを光栄に思ってほしい

分かった。そこまで言うなら俺のマントを使わせてやってもいい。

ただし洗濯費用は全てお前持ちだ

師匠、薬どこ入れたっけ~? 確かそっちやったと思うねんけど~
そうだったかな?
最初からそうしろテメー






――さて、行こか。この先の森を抜けてったら遺跡や
この先をもう少し行った所で前は襲われたんだったよな?
そうそうそう
じゃ、この辺から気をつけて
うん
……
……
……
ところでカイカ君
どうした
カイカは報酬の使い道決まってんのん?
いや……決まってない。お前は決まってるのか?
ウチ? ウチは今流行りの世界征服でもしよっかな~って思って、

そのための軍資金にさ

あー流行ってるよな~世界征服。世界を我が手中にーなんつって
そうそう。やっぱ今時世界征服くらい出来んとカッコ悪いわ。

面接でも「自分世界征服出来ます」言うたら「おっ君いいね!」って

絶対なるもん

分かる分かる~
今やったらカイカをウチの下っ端にしたるで。やる? 世界征服
やるわけねぇだろ。なんだ「今流行りの世界征服」って。

話すことないからってどデカい嘘をつき続けるのやめろ

あっはっはっは! あえてボケを泳がせてからのツッコミええやん!

ちょっと成長したんちゃう?

不本意にも誰かさんのせいでな
でもさ、世界征服言うたら……
足元借りるよ
へっ?


▼突然地面が隆起し、何かが飛び出してきた!


おわっびっくりしたっ!
ぐ、お、おお……
地面のすごく下で動いてたから、引っこ抜いてみたけど。

前に襲ってきたのとおんなじ?

そや! コイツやコイツ!

前もコイツが地面から不意打ちしてきてん!

そうそう、そうです
ああ、そうなんだ。なんか、喋る珍しい魔物だって聞いてるけど……
う、う……
全然喋ってくれないね
つーか、既に満身創痍やん。何したん?
地下10mから1秒で引っこ抜いた
時速約40km……それはものすごい頭打ったんとちゃう?
ああ、そうかもね
死ぬわ。よう生きとったなこいつも
そりゃあ、喋れないですよ
ふふ。失敗しちゃったね? じゃあアレに聞こうか


▼師匠は魔法を唱えた! 何かが高速で引き寄せられた!


……うわっ!?
えっうわっ!?
またさっきと同じ光景が
ぐっ、このっ
目と耳、借りるね。それと動いちゃダメだよ
うっ!? 身体が……なんだ、何をした! いったい何が……
師匠、こいつは?

遠くの木陰からずっとこっちを伺ってた。

魔法を唱えようとしたから、目と耳を使えないようにしたよ
もうなんでもアリやな、師匠。……魔法を使おうとしたってことは、

こいつが例のMPに干渉する魔法を使ってた犯人なんかな?

そうだと思うよ
魔法を使うのと目と耳を塞ぐのって、どういう関係なんだ
いきなり目見えへん、平衡感覚あらへんってなって、

まっすぐ走れる奴はおらんやろ。それと似たような感じ

よく分からん……
カイカはおバカさんやから、分からんくてもしゃーない
うるせえな、バカで悪かったよ
今のは説明が悪くない? 走るのとは全く関係ないよね
え、そうっ?
俺がバカかと思いきや、師匠さんのおかげで化けの皮が剥がれてきたな
ちゃうし! ちゃうし! ウチは悪ないもん!
……で、どうするの
ん? あー、せやな。とりあえず襲ってきた理由を聞こか
だそうだよ。襲ってきた理由を教えてくれるかな
うおおっ!? なんだこの声は……!?
君の声はちゃんと聞こえてるから、質問に答えてくれるかな?
……ちなみに、耳を塞いでるはずやのにアイツに聞こえてる原理は?
耳が聞こえなかったら脳に言い聞かせればいいんだよ
ウン、ソウヤナ。ウチモ、ソウオモウ
お前が思考停止して説明を投げると俺が分からないんだけど
ええねん分からんでも……そういう時もあると思うで……
お、おう
――お、俺は何も話さん! 殺したければ殺せ!
らしいよ
んー困ったな。色々聞きたいことあんねんけど。

喋れるタイプの魔物ってなかなかおらんし……

じゃあ、ちょっと強引な手を使おうかな
え、拷問? 身体に聞くとかそういう類の?
……健康志向?
「身体に効く」とちゃう、「身体に聞く」や。耳のほう
ああ、そういうこと。そういう意味なら身体には聞かないよ
そうなん? じゃあ強引な手って?
ん……のーに聞く
へっ? のー?





brain
「脳に」聞く
(拷問っていうか、洗脳だコレ……)
その後、師匠によるお見せできないグロ注意な「脳に聞く」作業が始まったとか。

次回以降、真面目なふいんきのおはなしが連続します。

この流れからどう転べば真面目になるのかをお楽しみに!

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登場人物紹介

山田太郎

元道具屋の店主。高レベルな魔法の腕を持っているが、

なぜか関西弁の守銭奴とやけに現代的な性格。

「ドカベンって呼んでもええで」と言ったり、

偽名で岩鬼正美を名乗るなど、某野球漫画に謎のこだわりあり。

カイカ

冒険者の戦士。腕前に自信があったので難関ダンジョンに挑戦してみたものの、準備不足で傷薬がなくなりピンチに陥るちょっとしたマヌケ。腕は確からしいが、コミュ力がないと山田にディスられている。

ハイロ・アナグレタ

第3話より登場。酒場の看板娘らしい。

たちの悪い冒険者に絡まれていたところを山田たちに助けてもらう。

美人さんだが、なぜか「~っす」という語調で話す。

師匠(アネア・エアクオウ)

第9話より登場。凄腕の魔法使いで、山田の師匠。

100年以上生きているらしいが若々しく、「魔女」らしい風貌。

しかし魔法以外の事は99%忘れてしまうらしく、100年前どころか

昨日のことすら記憶が怪しい。山田いわく「後期高齢者」

ヨミド

第19話より登場。ギルドのリーダーで、魔法使い。

厳格な性格で、プライドが高いような発言が見受けられる。

第一章の山田とカイカはヨミドと会うために旅をしているが、

その役割を考えると、たぶん彼がメインヒロインなんだと思います。

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