第3話:自律神経失調症が原因で退社

文字数 1,580文字

 外勤を始めて1ケ月が過ぎたある日、訪問した、お宅でMB銀行の商品説明をしてる最中に、突然倒れた。電話で、その知らせを聞いた佐光俊充の上司の木下課長が、その家を車で訪れ、佐光を車に乗せ、近くの総合病院へ行った。病院に着く頃には、佐光は我に返った。この状況を木下課長が病院の受付で説明すると、とりあえず内科を受診して下さいと言われた。

 30分ほど待たされ、血液検査を受けるように言われ、1時間ほどで終えた。その後、内科外来で30分待ち受診を受けた。佐光がいろんな質問を受け、血液検査、脈拍、動向、血圧、体温を測り、大きな病気ではなさそうですと言った。多分、自律神経失調症でしょうと言い、吃音も、極度の緊張、つまりあがり症が原因でしょうと伝えられた。

 自律神経失調症といっても、大きく4つのタイプがある。一番多いのが、心身症型自律神経失調症で自律神経失調症のうちの半分がこのタイプと言われている。原因は日常生活のストレスを無理に抑えることによる発症する。すると、佐光が人前に出ると上がるタイプですと言い、緊張して、吃音になると打ち明けた。

 心療内科に行くと良いが、まだ、東京でも少なくて、どこも混んでいて、治療費も自己負担が大きいので富裕層しか受診してないのが現状だと話した。その他、神経症型自律神経失調症は心理的な問題でおこり、自分の体の不調に敏感な人、くよくよしがちな神経過敏の人に多い。本態性型自律神経失調症は生まれつき自律神経の働きが乱れやすい。

 低血圧、虚弱体質、体力に自信がない人に多い。抗うつ型自律神経失調症は原因が慢性的なストレスの蓄積などによるうつ反応。几帳面で完璧主義の人に多い。この病気の場合は抗うつ気分を治療するため抗うつ剤を服用すると症状が改善すると説明された。この話をきいて、全て、あてはまるところがあると佐光が答えた。

 一番簡単な治療法はリラクゼーション法などによるセルフコントロールが効果があると言い、その中の1つ自律訓練法は、催眠療法から発展したもの。自分で自己暗示をかけて睡眠に導く事で心身の緊張状態を緩和できる。自律訓練法はコツを習得すれば体調を制御できるようになるのと教えてくれた。大きな本屋で捜せば、詳しくリラクゼーション法の解説本があるはずだと教えてくれた。

 この先生の話を聞いて、木下課長が営業活動は、やめさせた方が良いでしょうかと聞くと、できれば、その方が良いと言った。そして外来を終えて、診察室を出た。MB銀行に帰り、その話を木下課長が人事部長に話すと、東大でのエリートだから辞めてもらいたくない。仕方ない内勤して女子行員の計算のチェックをしてもらおうと人事部長が指示した。

 お心遣い、ありがとうございますと木下課長と佐光が頭を下げた。その後、計算が間違いない日は、17時に家に帰る生活が始まり、身体は楽になったが充実感がなく、女子行員からも冷ややかに目で見られた。同期の男性社員からは特別待遇の佐光は、仲間外れにされて、1人ぼっちの昼食の日が続いた。そんな日が1年続き、吃音も一向に改善されず、会社に来るのが嫌になった。

 そして、1972年の夏のボーナスをもらった後、体調不良を理由に、辞表を提出し、受理され、1972年6月30日、退職した。すると、藤岡隆三も大屋泰治も1972年8月には企業のペースになじめず、退職した。そんな失意の時に、東大時代に投資クラブで親しくしていた重野陽子さんに電話をして久しぶりに会った。

 その時、佐光俊充がMB銀行を退職した話をすると、同情してくれた。次に、佐光が重野さんに現状を聞くと、父と兄がマンションで開業医をして、姉が薬剤師で薬局、医療事務を自分がやっていて、いつも変化がない生活で面白くないと言い、自分が学んできたことを全く生かせないのに不満がたまっていると打ち明けた。
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