源氏物語の英訳が神業すぎたアーサーウェイリーとその日本語訳

文字数 906文字

源氏物語を読んだことはありますか?この、高校で古文を習うひとが無理やり読まされる作品、古文で読み通せるひとは、よほど古文解釈ができる人でしょう。こういう作品を13歳ぐらいで夢中になって読みふけり、その読み心地が后の位も問題にならないとまで思えるのは、菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)みたいな人ぐらいです。


そこで、この難解な古文が無理なら、せめて現代語訳で読んでみようと思います。邪道だろうとなんだろうと、読まないよりましなので。とはいえ、与謝野晶子訳なども敷居が高く感じる。そんなときに読むのがアーサーウェイリーの英訳を日本語訳した翻訳本です。


この本はすごいです。いや、ウェイリーの英訳がよくできているんですけども、これを翻訳したものが二種類でていまして、これが読みやすいんです。原文、英訳の日本語訳を少しみてみましょう。

原文

いづれの御時(おおんとき)にか、女御(にょうご)更衣(こうい)あまた侍(さぶら)ひ給ひけるなかに、いとやむごとなき際(きわ)にはあらぬが、すぐれてときめき給うありけり。はじめより我はと思ひあがり給へる御方がた、めざましきものにおとしめ嫉み給ふ。


毬矢(まりや)・森山訳

いつの時代のことでしたか、あるエンペラーの宮廷での物語でございます。


ワードローブのレディ(更衣)、ベッドチェンバーのレディ(女御)など、後宮にはそれはそれは数多くの女性が仕えておりました。そのなかに一人、エンペラーのご寵愛を一身に集める女性がいました。その人は侍女の中では低い身分でしたので、成り上がり女とさげすまれ、妬まれます。あんな女に夢をつぶされるとは。わたしこそとグレートレディ(大貴婦人)たちの誰もが心を燃やしていたのです。

どうでしょうか。日本語訳のワードチョイスがいいのかどうか、国文学に詳しい人の評価は知りませんが、これならとにかく読み通せそうな感じがします。さっそく本屋にいって買いましょう。


まあ、英語を母語とする読者に向けられた、創作的な英訳や、その現代語訳を読んだところで、源氏物語をきっちり読んだことにはなりませんが、気軽に読書を楽しむことが目的の場合には、そんなことはどうでもいいのです。

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