本屋大賞

文字数 624文字

 宮島未奈の『成瀬は天下を取りにいく』が、本屋大賞を受賞したという知らせを聞いたとき、文学賞に(うと)いぼくは、そういう文学賞があるんだなと思った。

 作者のホームページには、「二位の君」という作品が公開されており、一行目を読むと、その作品世界に入ってしまう魔力があるように思えた。中高生が読みやすい、ネットスラングを用いた文体は、なるほど、これが小説家の筆力というものか。そう思った。


 言葉の力、文学の力、詩の力。浜本さんは主催者挨拶で、能登や台湾の震災に触れ、電気がなくても、陽の光で読める紙の本には力があると確信していると言っていた。

 街は復興するだろう。それは工学の力だ。では本の力とはなんだろう・・・。インフラの復興が不十分な状況で、被災による心の傷を負ったひとに求められる言葉の力とはどんなものだろう。

 ぼくは、東日本大震災後、『生きる』という詩が再注目されたことを思い出した。えらいお坊さんが薦めていた坂村真民を思い出した。本を読むことで、苦難を乗り越える力を与えられる、そういうこともあるのかもしれない・・・。

坂村真民の詩


念ずれば花ひらく


念ずれば 花ひらく

苦しいとき

母がいつも 口にしていた

このことばを

わたしも いつのころからか

となえるようになった

そうしてそのたび

わたしの花が

ふしぎと

ひとつひとつ

ひらいていった


時間をかけて


あせるな いそぐな

ぐらぐらするな

馬鹿にされようと

笑われようと

自分の道を

まっすぐゆこう

時間をかけて

みがいてゆこう


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