翻案 ランタンフェスティバル
文字数 1,096文字
5年前の夏、ぼくはヨットで旅をしていた。人付き合いに疲れていたぼくは、都会の喧騒を逃れ、海の上で過ごしたい気分だった。
天候の良いある日、ヨットを風にまかせ眠っていたのだが、ふと目を覚まし、あたりを見回すと視界に島がはいってきた。いったいどこにいるのだろう。そう思って海図を調べてみたが、そこに目の前の島を見つけることはできなかった。
島にちかづくと、人の姿が見えた。どうやら女の人らしかった。上陸して、ここがどういう島なのかを尋ねると、みんな明るく、幸せに暮らしている地上の楽園だという。ぼくは誘われるままに彼女に導かれ、林の中の道を通り、集落にたどり着いた。そこは、広々とした土地で、立派な家があり、手入れされた畑や花壇があった。人々は楽しそうに語らい、幸せそうに見えた。
ランタンをつくり終えたころには、夕暮れどきで、ランタンを上げる広場に着いた頃にはすっかり暗くなっていた。広場に集まったひとたちとともに、ランタンに火を灯し、合図とともに舞い上げた。ランタンが上空に舞い上がり、さらに上空で花火がきらめいた。
その後、饗宴が催され、夕食をごちそうになったのだが、眠気に襲われたぼくは、お世話になった人たちに感謝を述べ、寝室へと案内してもらった。それまでずっと楽しそうにしていた彼女だったが、このときには少し寂しげな、悲し気な表情を浮かべていた。
参考にしたもの
桃花源記