手塚治虫 ネオ・ファウスト
文字数 3,317文字
大阪。昼のスターバックス。店内は清潔感のあるシックなデザインで、それでいて温かみを感じる。店内の一つのテーブルに、高校生の男女が向かい合って座っている。男子高校生はスターバックスラテを、女子高校生はキャラメルマキアートを飲んでいる。
見つけた。正直、
もちろん、そのつもりや。というか、そのために詩乃に会ってるといっても
せやねん。漫画を描くために生まれてきたような人やったんやろな。まあ、ずっと順調にいったわけではないみたいやけどな。で、手塚作品には、鉄腕アトム、ジャングル大帝、ブラック・ジャック、いろいろと有名な作品があんねんけど、名作文学の漫画化もやってたんや。ドストエフスキーの『罪と罰』とか、詩乃の好きそうな『ベニスの商人』とかも漫画化されてる。『旧約聖書』って作品もあるけど、これはキリスト教の立場からとらえた世界観かもな。ユダヤ教は『旧約』って言葉、使わへんし、バチカンから、イタリアの国営放送で流すアニメをつくってほしい、クリスチャンではない手塚が描く聖書の世界が見たいって依頼がきたのがきっかけらしいし。
紹介したい作品はな、『ネオ・ファウスト』ってやつや。ゲーテって知ってるやろ?手塚はゲーテが書いた『ファウスト』って
せやな。自分の人生に満足せず、悪魔と魂を引き換えに現世での幸福を追求するみたいな。それと、ゲーテの『ファウスト』の序章、天上の序曲ってところは、ヨブ記(セフェル・イヨヴ、סֵפֶר אִיּוֹב)冒頭とかなり似てる。ヨブ記だと、神がしもべのヨブのことを、地上に彼ほど神をおそれ、悪を避けているものはいないって言うと、サタンは、財産や身体に災いがあると神を呪うとかっていうやん?で、神が、命を奪うのはいけないが、サタンの好きなようにしてよいって言うと、サタンがヨブをひどい皮膚病にして苦しませて、それでもヨブは、神から幸福をもらったんだから、不幸もいただこうって言って
で、ゲーテの『ファウスト』の「天上の
せやな、実はこれ未完の作品やねん。ただ、アニメ用のシナリオは完成してたらしく、その冒頭では、神とメフィストが
でな、一ノ関先生は、新しい人生で、メフィストを自由に利用し、快楽の世界を味わいたい、それに満足し、「時よとまれ、おまえはうつくしい」っていったら、魂をゆずりわたすからっていって、メフィストと契約してしまうんやな。メフィストは女悪魔って感じで描かれてる。ほんで、時空を超えて移動した後、一ノ関先生はメフィストの薬で若返り、その後、生命体をつくりだす
せやろ?でも漫画は未完やからなあ。まあアニメ用のシナリオやと、人工細胞から、理性のない、ただ
主な参考資料
NHK. 1999. 手塚治虫 世紀末へのメッセージ
ゲーテ作, 相良守峯訳. 1958. 天井の序曲, ファウスト第一部. 岩波書店 pp.23-30
手塚治虫. 2011. ネオ・ファウスト (手塚治虫文庫全集) . 講談社
German Bible Society. Job. Biblia Hebraica Stuttgartensia