研究所に響く銃声 1 研究所のメンバー

文字数 1,376文字

俺は宮本(みやもと)和也(かずや)。研究所のメンバーからはムサシと呼ばれている。いちおう、研究所のリーダー的存在だ。
私は三上ちひろ。研究所ではお姉さん的存在かしら。
私は住吉(すみよし)有希(ゆき)。趣味は読書です。
俺は浅倉(あさくら)洋平(ようへい)。好きな言葉はバカと天才は(かみ)一重(ひとえ)
森本(もりもと)祐樹(ゆうき)です。こう見えて、けっこう運動してるんですよね。

古来、人は人を殺してきた。破壊衝動が国家レベルになると、戦争が生じる。思うに人を殺したいという欲望は、多かれ少なかれ、誰もが経験するものかもしれない。


しかし、平和主義者として知られる人たちがいるのもたしかなことで、兵役拒否などという行為は、平和を望む心の現れかもしれない。思うに、人間には人を傷つけたいと思う性質と人を傷つけたくないと思う性質があって、何らかの条件により、そのどちらかが強く出てくるのではないか。


どのような条件で、人は殺人衝動を感じるのだろうか。ここは、そのような殺人の衝動を追究する国の研究所。平時であれば殺人はゆるされない。しかし、戦時となると、国としては敵対勢力の兵士を殺すことが要求される。この研究所を設立した国家としては、戦時動員に備え、殺人の抵抗を低め、殺人衝動を高める方法を把握する必要を感じていたのである。

おはよう。みんなを呼んでくれ。

どうしたの?

非常事態が生じているんだ、三上。

ひょっとして、あの薬のことですか?私もさっき気づきましたが・・。

そうだ。
ムサシ。あれが全部なくなってるけど、なんで?
浅倉か。ちょうどそれについて話し合うところだ。

何かあったんですか?

みんな集まったな。では俺たちが置かれた状況を説明しよう。・・・俺たちが開発した例の薬のことは覚えているか?

ええ。殺人衝動を飛躍的に高める飲み薬のことでしょ?

そうだ。その錠剤がすべてなくなっている。ここは人の出入りがない研究所だから、俺たち5人の誰かが犯人にちがいない。

何事もなければいいですけど、科学者の好奇心というのは必ずしも善意とともに生じるものではありません。ただ純粋に何が起こるか知りたい、試してみたいという好奇心が破滅的な事態を招くことも十分考えられますね。

その通り。
ムサシさん、俺たちの誰かが誰かに薬を飲ませてみたんじゃないかっていいたいんですか?

そうだ、森本。最悪の事態を想定したほうがいい。知ってるだろ?あれだけの錠剤がどんな効果をもたらすか?

でも、あれだけの量の錠剤を飲んだ人間はいないのだから、実際どうなるかなんて誰にもわからないわ。
三上さん。このタイミングでそんなこというと疑われますよ。
そうだ。不用意な発言はやめてもらいたい。殺人衝動が発現すれば誰かが殺されることは間違いないだろう。

でもさ、薬を盗んで使ってみたやつがいるとして、どうやって見つければいいの?

・・・方法がないこともないが、確実ではない。

どういう方法なんですか?ムサシさん。

実は、あの薬を飲んだかどうかを判定できる検査方法があるんだ。

へー。そんな大事なこと、私たちには隠してたの。

しかし、1回しか使えない。5人に使えればいいのだが・・。

ほんとに5回使えないんですか?

まあ、ムサシがそう言うならそうなんだろ。ただ、判定は正直に言ってもらいたいね。飲んでもないやつに飲んだとか言わないでくれよ。

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