翻案 動物園のバイト
文字数 2,031文字
イソップ物語には、のどが渇いたヤギが、井戸の水がおいしいというキツネにだまされて、井戸に落とされるという話があります。
こうした話は、古今東西にあるようで、日本にも、うまい話には裏があるということわざがよく知られています。
さて、大学生の池田くんは、いろいろなバイトをしてみたのですが、どうにも長続きせず、悩んでいました。そのことを知った友人の前田くんは、なにやら怪しげな仕事を紹介してあげました。
こうして、池田くんは、動物園に行くことにしました。
虎です。
実は、動物園で一番人気ものの虎が亡くなりましてね。で、べつの虎を連れてくるまでの間、虎の代わりをする人が必要なんですよ。
なるほど、たしかに人をだますのはよくない。そりゃそうです。でもね、最近、はやり病のせいで、客足が遠のいていましてね、虎が見れないなんてことがばれたら、ますますお客さんがこなくなって、園の経営が大変になるんですよ。
まあ、人助けだと思って、次の虎がくるまでの間だけ、ちょっと助けてくれると大変ありがたいなあ。
こういうわけで、池田くんは動物園でバイトをすることになり、バイトの初日がやってきた。
ほんとに、一日中ぶらぶらしてるだけでいいみたいだな。なんて仕事だ。となりのオリにライオンがいるのが気になるといえば気になるけど、これで10万円もらえるなんて最高だな。
そういえば、お腹がすいてきたんだけど、昼ご飯はでるんだろうか・・・。
お、また子供がやってきた。やっぱり、虎って人気あるんだな。
この時、場内アナウンスが流れてきた。
皆さま、ご来園くださり、まことにありがとうございます。本日は、特別なイベントをご用意しております。これから、百獣の王ライオンと密林の王者トラの決闘を開催いたしますので、どうぞオリの前までお集まりください。
さあ、いよいよです。ライオンのオリとトラのオリの間にある扉が開かれます。果たして勝つのはどちらでしょう。
扉が開かれると、ライオンは一目散にトラに襲いかかった。ライオンは、まさに虎の首を咬もうとしているように見えた。
参考にしたもの
落語の動物園。イギリスのジョークが元ネタらしいです。ほんとうかどうか知りませんが。