ワンピース セオリー1 ワンピースの元ネタと主題
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『マンガ学入門』によると「マンガの歴史は、児童文学との関わりでいうと、敵対関係とまではいわないにしても、完全に無視されたものだった₁」そうなんですが、『ワンピース』を読むと、いたるところで、神話や文学が元ネタになっているところがあるんですよ。
そうです。この作品にフィンケルスタイン博士というキャラがいて、ヒロインであるサリーを作りますよね。そして、サリーを家政婦のように考えるんですけど、この関係性が『ワンピース』のスリラーバーク編に出てくるドクトル・ホグバックとビクトリア・シンドリーの関係と類似しているんですよ。
他には『ガリバー旅行記』のリリパット
あります。創世記には、アダムとイブがエデンの園にある禁断の果実、善悪を知るようになる木の実を食べ、神から追放される描写があります。一方『ワンピース』には食べるとさまざまな能力が身につく一方、海に嫌われ、海水につかると能力が発動されず、かなづちになってしまうという、悪魔の実が登場します。ほかには、
そうです。フランス軍が見つけたロゼッタストーンには、同じ内容がヒエログリフ(
『ワンピース』では、ポーネグリフというものが登場します。まあ、これは現存する統治体制を正当化する意図でつくられたものではなく、ワノ国の
フランス革命との関係性が指摘されています。革命期には、
『ワンピース』には、イムを含む世界政府側の権力者が海軍などの武力を用いて世界を支配する秩序が存在しています。世界政府をつくりあげた連合王国の王たちの
また、クローバー博士によれば、後に世界政府となる連合国に滅ぼされた王国があり、世界政府は、リオポーネグリフに書かれている古代王国の存在と思想を
そうですね。まずモチーフについてなんですが、日本国語大辞典には次のような定義が書かれています。
芸術的創作活動の動機となるもの。特に、作品によって表わそうとする中心思想や主題をいう。(精選版 日本国語大辞典)
ビゴーが描いた
『ワンピース』は現実世界の何かを問題にするというよりは、勧善懲悪の道徳思想に基づいて、武力により、より強い圧政者を倒していくことを描くことを主題の一つにしているように思います。
たとえば、リク王を排除し、国王の座についたドン・キホーテが支配するドレスローザでは、トンタッタ族が奴隷労働させられ、シュガーの能力によっておもちゃにされたものは、記憶を消され労働に従事させられていました。ルフィ達がドフラミンゴファミリーを倒すことでトンタッタ族やおもちゃは強制労働から解放され、リク王が復位することになりました。
また、カイドウ率いる百獣海賊団とオロチに支配されているワノ国では、花の
百科事典で、勧善懲悪、解放戦争について調べると次のような記述を確認できます。
【勧善懲悪】
江戸時代にあっては,ひろく大衆を思想的に啓発し,嚮導(きようどう)する文学・演劇が,基本的に持つべきとされる,文学的原理であった。
明治になり、
【解放戦争】
ナポレオンに対する諸国民の解放戦争に由来し,近代国民国家の形成過程において,民族を外国支配から解放する戦争をさしていたが,20世紀に入り
これをふまえると『ワンピース』は、理想的英雄像である革命勢力が、圧政を行う支配階級を武力によって打倒し、彼らに隷従している被圧迫人民を解放することが主題の一つになっており、勧懲原理や義俠思想といった文学的原理に基づいて描かれることがあるといえるように思います。
引用
₁ マンガ学入門. ミネルヴァ書房. pp.179-180
₂ ひたすら勧善懲悪をば