21:こども霊
文字数 2,799文字
もなが勇気を出して 205 号室に聞き耳を立てましたが、突然背後に誰かがいる気配を感じ、驚いてガタンッと倒れ込むようにドアを開けてしまいました。
その物音に気を取られたため、くるみも 203 号室の音を聞くことはできませんでした。
二人が飛び込むようにして部屋の中に入っていったのを、くるみ、時津、楠木の3人も目にしました。
瀬川はすぐさま 205 号室に入り、もなを助け起こしました。そして室内を照らしてみました。
室内を見てみると、これまで見てきた部屋よりは荒れていませんでした。いくつかの荷物やキャリーケースなどが置いてあり、家族旅行に来た宿泊客のようです。
荷物を調べてみると、服などでそれが女性の物だということが分かりました。
日記帳が一つありました。滲んでいてほとんど読むことはできないのでパラパラとめくっていくと、最後のほうで目が留まりました。
瀬川は指が入って上手く撮ることができませんでした。
もなが撮った写真は、目の前の光景そのままでした。
203 号室の前には、楠木、時津、くるみ、タケルとすみれがいます。
楠木はドアから少し離れていたため何も聞こえませんでした。
しかしドアの近くにいる時津とくるみが聞き耳を立てても、中からは特に物音は聞こえませんでした。
すみれとタケルは 205 号室の様子を見に行きました。
残った楠木、時津、くるみの3人は 203 号室の中へ入ることにしました。
3人が中に入って色々と調べていると、今までの部屋と同じ造りであるにも関わらず、どこか違和感を覚えます。
あなたたちは部屋に入ってすぐに帽子が落ちているのを見付けました。
時津は、この帽子は先程トイレで発見した写真に映っていた男性がかぶっていたものとまったく同一のものであることに気が付きました。
時津は帽子を拾い上げました。
突然、部屋のインターホンが鳴り響きました。
くるみはドアの覗き穴から向こう顔を覗いてみました。
するとそこには、目が窪み口の中が空洞で真っ黒になった、青白い顔をした子どもが目の前に立っていました。
ガチャガチャガチャガチャガチャッ!
くるみが驚いてドアから離れた瞬間、ドアノブが激しく動き始めます。
バンバンバンバンバンッ!
同時に、時津と楠木の背後の窓を激しく叩く音がします。
時津はくるみの手を掴んで、部屋の中央まで引っ張り戻しました。
バリンッ!
あなたたちが相談していると、背後の窓ガラスが割れた音がしました。
そして、2体の青白い子どもが窓から部屋の中へ侵入してきました。
くるみがドアを見ると、ドアからガチャガチャという音はしなくなっています。
逃げ出そうとした時津は、その場で転倒してしまいました。
くるみは青白い子どもたちが近付いてくる光景に恐怖しているため、手が震えて振りかざした肉切り包丁を子どもたちに振り下ろすことはできませんでした。