13:変わり果てた女将
文字数 2,122文字
女湯。
楠木、瀬川、もなは脱衣所に入りました。
楠木が脱衣所を見回してみたところ、今までと同じようにやはり籠などが壊れて散乱しています。服は見当たりません。
瀬川は浴場から物音がすることに気付きました。中に誰かがいるようです。
浴場の扉は磨りガラスで、中は真っ暗です。
瀬川は浴場の扉を開け、浴場の内部を照らしてみました。そこには人影がありました。
その人影を照らすと見覚えがある女将の後ろ姿でした。
女将がそう言うと、その首がほぼ180度回転し、あなたちのほうを振り返りました。
女将の顔は青白く、目の周りは窪んで空洞のようになっており、口も開いてその中すらも空洞のようになって真っ黒く見えます。
女将は床に倒れ込み、這うようにして襲い掛かってきました。
瀬川は咄嗟に扉を閉めることに成功しました。
ベタッと「女将らしきもの」が扉に貼り付き、瀬川はそれと目が合いました。
「女将らしきもの」が扉を破って入ってくることはなく、瀬川をじっと見詰めた後、扉から離れてゆきました。
3人は一刻も早くこの場を離れようと、慌てて廊下に飛び出ました。
男湯。
脱衣所を灯りで照らしてみると、やはりボロボロの状態です。
浴場は改装中で、ブルーシートが畳んで置かれており、砂袋や脚立もあります。その傍には一斗缶が3つほどあります。
一斗缶からは、どこかで嗅いだことのある鼻につくにおいがします。
時津とくるみがそうして話し合っていると、男性の悲鳴が聞こえました。
「うわぁぁああああっ!!」
くるみが脱衣所で投げられるような何か手頃な物が無いか探したところ、尖った石を見付けました。
タケルとすみれはくるみを見て若干引いています。
タケルはちょっと可哀想な目をくるみに向けます。
男湯にいた4人も廊下に出て、そこで瀬川、もな、楠木の三人に合流しました。